NASAが次世代宇宙服の開発・製造を担当する民間企業2社と契約を締結
【▲ コリンズ・エアロスペースが開発を進めている次世代宇宙服(Credit: Collins Aerospace)】
【▲ コリンズ・エアロスペースが開発を進めている次世代宇宙服(Credit: Collins Aerospace)】
【▲ コリンズ・エアロスペースが開発を進めている次世代宇宙服(Credit: Collins Aerospace)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は6月2日、次世代宇宙服の開発・製造を担当する企業にアクシオム・スペースとコリンズ・エアロスペースの2社を選定し、契約を結んだことを発表しました。今回締結されたのは2034年までに最大35億ドル相当の契約で、両社が提供する宇宙服はNASAが進めている有人月面探査計画「アルテミス」をはじめ、国際宇宙ステーション(ISS)や民間の船外活動で使用される可能性もあります。

現在NASAがISSで使用している「船外活動ユニット(EMU:Extravehicular Mobility Unit)」は、スペースシャトルの運用開始と同時期に設計・開発された宇宙服です。NASAはアルテミス計画を見据えて新たな宇宙服の導入を計画しており、2019年10月には月面探査用に開発された宇宙服として「探査船外活動ユニット(xEMU:Exploration Extravehicular Mobility Unit)」が発表されていました。

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しかしその後、xEMUの開発遅延もあってNASAは方針を転換。民間企業に委託された有人宇宙船や無人補給船と同様に、次世代宇宙服の開発・製造を担う「探査船外活動サービス(xEVAS:Exploration Extravehicular Activity Services)」の契約企業を2021年に募集していました。

【▲ 次世代宇宙服を装着して月面を探査する宇宙飛行士の想像図(Credit: NASA)】
【▲ 次世代宇宙服を装着して月面を探査する宇宙飛行士の想像図(Credit: NASA)】

アクシオム・スペースは2022年4月に初の民間主導ISS滞在ミッション「Ax-1」を成功させた民間宇宙企業です。次回以降の民間主導ミッションについても準備が進められている他に、2024年以降にはISSを足掛かりに自社の民間宇宙ステーション「アクシオム・ステーション」の建設も計画しています。

いっぽう、コリンズ・エアロスペースは軍事事業や航空宇宙事業を展開するレイセオン・テクノロジーズの子会社で、EMUを製造した企業の一つハミルトン・スタンダードを傘下に収めている他に、同じくEMUを製造したILCドーバーとも協力関係にあります。

今回NASAと契約を結んだ両社は、まずは地球低軌道における技術実証と、2025年に予定されているアルテミス計画初の有人月面探査ミッション「アルテミス3」のために、次世代宇宙服の開発・製造を進めることになります。EMUは地球低軌道での活動を前提に設計されましたが、新たな宇宙服では月面での探査活動で求められる動きやすさが考慮されます。また、次世代宇宙服は大半の宇宙飛行士の体型に対応するよう設計され、新しい技術を迅速に導入することも可能になるようです。

なお、アルテミス計画には日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)も参加しています。2023年2月頃に発表が予定されているJAXAの新たな宇宙飛行士候補者も、アクシオム・スペースやコリンズ・エアロスペースが開発した次世代宇宙服に身を包んで月面を歩くことになるかもしれません。

 

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Source

  • Image Credit: Collins Aerospace; NASA
  • NASA - NASA Partners with Industry for New Spacewalking, Moonwalking Services
  • Collins Aerospace - Collins Aerospace selected to outfit the next generation of space explorers
  • SpaceNews - NASA selects Axiom Space and Collins Aerospace for spacesuit contracts

文/松村武宏