ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設へ輸送される有人宇宙船「スターライナー」(Credit: NASA/Glenn Benson)
【▲ ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設へ輸送される有人宇宙船「スターライナー」(Credit: NASA/Glenn Benson)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は5月4日付で、ボーイングの新型有人宇宙船「CST-100 スターライナー」をユナイテッドローンチアライアンス(ULA)のロケット「アトラスV」へ搭載する作業が同日に行われたことを明らかにしました。

スターライナーはスペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」とともに、NASAのコマーシャルクループログラム(商業乗員輸送計画)のもとで開発がスタートした有人宇宙船です。2019年12月にはスターライナーの初飛行となる無人軌道飛行試験「OFT(Orbital Flight Test)」が実施されたものの、ソフトウェアの問題により計画されていた軌道に入ることができず、国際宇宙ステーション(ISS)への到達を断念して地球に帰還しました。

改めて計画された2回目の無人軌道飛行試験「OFT-2」は2021年8月に打ち上げが予定されていましたが、帰還前に切り離されるサービスモジュールのバルブに問題が見つかり、対策を行うために実施が延期されていました。

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ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設の垂直統合施設に到着したスターライナー。奥に見えているのは打ち上げに使われるULAの「アトラスV」ロケット(Credit: NASA/Ben Smegelsky)
【▲ ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設の垂直統合施設に到着したスターライナー。奥に見えているのは打ち上げに使われるULAの「アトラスV」ロケット(Credit: NASA/Ben Smegelsky)】

今回アトラスVに搭載されたスターライナーは、延期されていたOFT-2で飛行する機体です。5月6日現在、OFT-2の打ち上げは米国東部夏時間2022年5月19日18時54分(日本時間5月20日7時54分)が予定されています。

アトラスVによって弾道軌道に投入されたスターライナーは、自身のエンジンを使って地球周回軌道に入ります(2019年12月のOFTではこの段階で問題が発生し、計画通りの軌道に入ることができませんでした)。軌道へ入ることに成功したスターライナーは打ち上げから24時間ほど後にISSへドッキングし、5日~10日ほど後に地球へ帰還する予定です。OFT-2が成功すれば、次は実際に宇宙飛行士が搭乗する有人飛行試験「CFT(Crew Flight Test)」が行われることになります。

なお、スターライナーと同時期に開発されたクルードラゴンは飛行試験も含めてすでに7回の有人飛行を実施しており(2022年4月27日打ち上げの「Crew-4」ミッションを含む)、そのうち2回は民間人のみが搭乗して行われました。先日ミッションを終えたアクシオム・スペースの「Ax-1」では、4名の民間人がISSに滞在し、様々な科学実験や技術実証などを行っています。

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ボーイングはブルー・オリジンやシエラ・スペースなどと共に商用宇宙ステーション「オービタル・リーフ」の建設計画に参加しており、同ステーションへの往復にスターライナーを用いることも想定されています。現在のISSや、その後の商用宇宙ステーション時代における民間による地球低軌道の利用を支える有人宇宙船のひとつとして、スターライナーの実用化が期待されます。

 

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Source

  • Image Credit: NASA/Glenn Benson, NASA/Ben Smegelsky
  • NASA - Starliner Joins Atlas V at Space Launch Complex-41
  • ULA - Atlas V Starliner OFT-2

文/松村武宏

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