ISSロシア区画で船外活動実施 「欧州ロボットアーム」が宇宙で初稼働
【▲ 欧州ロボットアーム(ERA)の起動作業が行われたロシアの宇宙飛行士による船外活動の様子(Credit: NASA)】
【▲ 欧州ロボットアーム(ERA)の起動作業が行われたロシアの宇宙飛行士による船外活動の様子(Credit: NASA)】
【▲ 欧州ロボットアーム(ERA)の起動作業が行われたロシアの宇宙飛行士による船外活動の様子(Credit: NASA)】

国際宇宙ステーション(ISS)では日本時間2022年4月28日から翌29日にかけて、ロシアの宇宙飛行士2名による船外活動が実施されました。今回の船外活動では2021年7月にISSへ到着した多目的実験モジュール「ナウカ(Nauka)」に取り付けられているロボットアーム「欧州ロボットアーム(ERA:European Robotic Arm)」の起動作業が行われました。

欧州ロボットアームはISSのロシア区画で運用するために開発されました。アームの全長は11.3mで、関節の数は7つ(3つの関節を備えた「手首」が2つと中間の「肘」が1つ、7自由度)。アームの両端にはエンドエフェクタ(把持手)が備わっていて、ナウカの外装や実験装置等のグラップルフィクスチャ(把持ポイント)を掴むことが可能。欧州宇宙機関(ESA)によると、最大8トンの実験装置などを5ミリメートルの位置決め精度で扱えるといいます。

関連:今夏打ち上げ予定のISS新モジュール「ナウカ」にロボットアームが取り付けられる

【▲ 運用中の欧州ロボットアームを描いた図(Credit: ESA - D.Ducros)】
【▲ 運用中の欧州ロボットアームを描いた図(Credit: ESA - D.Ducros)】

アームは船内と船外のどちらからでも操作することが可能です。ナウカには実験装置用の小型エアロックが備わっていますが、欧州ロボットアームを使えばISSロシア区画でも船外活動をせずに実験装置を船外に設置できるようになります。また、船外活動中の宇宙飛行士の移動をサポートするために使うこともできるといいます。

ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスのオレッグ・アルテミエフ(Oleg Artemyev)宇宙飛行士デニス・マトベーエフ(Denis Matveev)宇宙飛行士は、日本時間4月28日23時58分から船外活動を開始。両飛行士は欧州ロボットアームを保護していた断熱材や打ち上げ時のロック機構を取り外し、打ち上げ後に初めて稼働したアームが把持ポイントの1つを掴むまでの動きをチェックしました。

【▲ 今回の船外活動の解説動画(ISS公式Twitterアカウントより)】

両飛行士は日本時間4月29日7時40分にISS船内へ戻り、7時間42分の船外活動を終えました。船外活動終了から間もなく、船内に留まっていたセルゲイ・コルサコフ(Sergey Korsakov)宇宙飛行士によって2つ目の把持ポイントを掴む作業が完了しています(※)。また、今回の船外活動では将来の活動に備えて、ナウカの外装に幾つかの手すりが追加されました。

※…今回の船外活動の解説動画によれば欧州ロボットアームをナウカの反対側にある把持ポイントまで移動させることになっており、作業内容の一部が変更された模様です。

アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、今回はアルテミエフ飛行士にとって5回目、マトベーエフ飛行士にとって2回目の船外活動でした。ISSとしては2022年で5回目、通算250回目の船外活動となりました。なお、今後は欧州ロボットアームの準備作業の続きと、ナウカの小型エアロックの起動作業を行うための船外活動が計画されているとのことです。

 

関連:国際宇宙ステーションで2022年最初の船外活動、ロシアの宇宙飛行士が実施

Source

  • Image Credit: NASA
  • NASA - Cosmonauts Set Up Robotic Arm’s First Motion, Wrap Up Spacewalk

文/松村武宏