小惑星探査ミッション「OSIRIS-APEX」のイメージイラスト(Credit: Heather Roper)

【▲ 小惑星探査ミッション「OSIRIS-APEX」のイメージイラスト(Credit: Heather Roper)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間4月25日、現在実施されている以下の惑星科学ミッション8件が延長されることを発表しました。

「OSIRIS-REx」(オシリス・レックスまたはオサイリス・レックス):小惑星の周回探査と表面からのサンプル採取
「MAVEN」(メイブン):周回機による火星の上層大気に関する探査
「InSight」(インサイト):着陸機による火星の内部や地震活動に関する探査
「Lunar Reconnaissance Orbiter」(LRO:ルナー・リコネサンス・オービター):周回機による月の表面と地質の探査
「Mars Science Laboratory」(MSL:マーズ・サイエンス・ラボラトリー):探査車「キュリオシティ」による火星表面の探査
「New Horizons」(ニュー・ホライズンズ):太陽系外縁天体の探査
「Mars Odyssey」(マーズ・オデッセイ):周回機による火星表面や気候の探査
「Mars Reconnaissance Orbiter」(MRO:マーズ・リコネサンス・オービター):周回機による火星の表面・地質・大気・気候の探査

(以上、NASA発表順)

今回のミッション延長は、定期的に実施されているNASAの惑星ミッションシニアレビュー(Planetary Mission Senior Reviews:PMSR)の提案を受けて決定されました。シニアレビューは学界、産業界、そしてNASAから選ばれたメンバーで構成される独立した専門家パネルであり、予想される科学的利益を評価した上で、新たな成果が期待できるミッションの延長を提案します。

オシリス・レックスのサンプル採取装置「TAGSAM」の先端を写した連続画像。漂っているのは採取された粒子の一部とみられている(Credit: NASA)

【▲ オシリス・レックスのサンプル採取装置「TAGSAM」の先端を写した連続画像。漂っているのは採取された粒子の一部とみられている(Credit: NASA)】

いずれも重要な成果をもたらしてきたミッションばかりですが、注目はNASAの発表で筆頭にあげられているオシリス・レックスです。

オシリス・レックスは2020年10月に地球近傍天体(NEO:Near Earth Object)の一つである小惑星「ベンヌ」(101955 Bennu)で表面からサンプルを採取することに成功し、現在地球への帰路についています。探査機が地球に帰還するのは2023年9月24日の予定です。

オシリス・レックスは、同時期に小惑星「リュウグウ」(162173 Ryugu)からサンプルを採取し、2020年12月6日に再突入カプセルが回収された宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」の姉妹ミッションとして紹介されることもあります。

関連:NASA小惑星探査機「オシリス・レックス」がベンヌを出発、地球への帰路に

サンプルを持ち帰った「はやぶさ2」は再び地球を離れて、小惑星「1998 KY26」のランデブー探査(2031年予定)を目指す拡張ミッションに入りました。オシリス・レックスも同様で、再突入カプセルを分離してからはミッション名を「OSIRIS-APEX」(本稿では以下「オシリス・エイペックス」)と改め、新たな小惑星へと向かうことになりました。

その小惑星とは2004年に発見された「アポフィス」(99942 Apophis)です。直径約370mのアポフィスはたびたび地球に接近しており、将来地球に衝突する可能性があることから特に注視されている「潜在的に危険な小惑星」(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)のひとつです。

現在その可能性は否定されていますが、アポフィスは2029年に地球へ衝突する確率が高いと一時期予想されていたことから、PHAのなかでもよく知られている小惑星ではないでしょうか。ちなみに改称後のミッション名に含まれる「APEX」は「Apophis Explorer」の略となります。

関連:小惑星「アポフィス」今後100年間は衝突の可能性なし。NASAによる最新の分析結果

【▲ 2029年4月13日に地球の近くを通過していくアポフィスの軌道(黄色)を示した動画】
(Credit: NASA/JPL-Caltech)

アポフィスは2029年4月に地球へ接近して高度3万2000km以下を通過していきますが、オシリス・レックス改めオシリス・エイペックスはこの接近直後にアポフィスを周回する軌道へと入ります。オシリス・エイペックスによるアポフィスの周回探査は18か月間の予定で、地球接近時に生じる小惑星の変化や、探査機のスラスターを使って砂や小石を吹き飛ばした表面の様子を観測することが計画されています。アポフィスへの到着と周回探査に備えて、ミッションは9年間延長されます。

なお、他のミッションの大半は活動期間が3年間延長され、より長い期間の探査活動を通してさらなる科学的成果を得ることが期待されています。積もった砂埃によって太陽電池の発電能力が低下しているインサイトについては、2022年末までの延長となります。また、現在太陽から約53天文単位(地球から太陽までの距離の約53倍)離れたところを飛行しているニュー・ホライズンズの科学計画については、後日詳細が発表されるとのことです。

 

関連:米国とUAEの宇宙機関が火星探査ミッションのパートナーシップに合意

Source

  • Image Credit: Heather Roper, NASA/JPL-Caltech
  • NASA - NASA Extends Exploration for 8 Planetary Science Missions
  • University of Arizona - NASA gives green light for OSIRIS-REx spacecraft to visit another asteroid

文/松村武宏