地球をかすめていく幾つもの小惑星や、11年周期で活動期と静穏期を繰り返す太陽活動、それに人類自らが軌道に放ってしまった無数のスペースデブリ(宇宙ゴミ)。地上から見上げる夜空は美しいものの、宇宙には様々なリスクも潜んでいます。そんな宇宙からのリスクに対処するための新しい拠点「宇宙安全センター(Space Safety Centre)」が、欧州宇宙機関(ESA)によって2022年4月12日に開設されました。

ESAの太陽探査機「ソーラー・オービター」が2022年2月15日に紫外線の波長で撮影した太陽。画像左上に向かって巨大なプロミネンス(紅炎)が噴出している(Credit: Solar Orbiter/EUI Team/ESA & NASA)

【▲ ESAの太陽探査機「ソーラー・オービター」が2022年2月15日に紫外線の波長で撮影した太陽。画像左上に向かって巨大なプロミネンス(紅炎)が噴出している(Credit: Solar Orbiter/EUI Team/ESA & NASA)】

太陽表面の爆発現象である「太陽フレア」や、太陽フレアにともなうプラズマの放出現象「コロナ質量放出(CME)」、太陽から地球に飛来する高エネルギー陽子が増加する「太陽プロトン現象」、それに太陽風によって引き起こされる地球の地磁気の乱れ「地磁気嵐」。このような太陽活動にともなう現象は「宇宙天気」と呼ばれています。

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宇宙天気は人類の文明活動に影響を及ぼすことがあります。地上や宇宙での通信障害衛星測位システムの誤差増大をはじめ、運用されている人工衛星の誤動作を招いたり、地上の送電網や通信網に大きな被害をもたらしたりすることさえあるのです。ドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センター(ESOC:European Space Operations Centre)のロルフ・デンシング代表によれば、深刻な宇宙天気現象は欧州に150億ユーロ以上という甚大な被害をもたらす可能性があるといいます。

2022年4月に開設されたESAの宇宙安全センター内部の様子。画像中央のモニターを指している人物はESAのジョセフ・アッシュバッハー長官(Credit: ESA / J. Mai)

【▲ 2022年4月に開設されたESAの宇宙安全センター内部の様子。画像中央のモニターを指している人物はESAのジョセフ・アッシュバッハー長官(Credit: ESA / J. Mai)】

宇宙天気現象を防ぐことはできなくても、宇宙でいま何が起きているのかを把握し、いつどのような影響が生じ得るのかを予測すれば、被害を軽減することにつながります。太陽活動や地磁気を観測して宇宙天気の変化を予測する取り組みは「宇宙天気予報」と呼ばれていて、日本をはじめ各国で実施されています。

今回、ESOCに開設された宇宙安全センターは、宇宙天気の監視・対処にあたるチームのための専用施設です。ESAはこれまでにも衛星などを使って集められた情報をもとに、宇宙飛行士や人工衛星・宇宙船の安全を保ったり、太陽活動から電力網などを保護したりする活動をサポートしてきました。

ESAによると、宇宙安全センターはESAが構築した宇宙天気サービスネットワークと緊密に連携し、欧州の衛星オペレーター、研究所や研究者、輸送・ナビゲーション・電力網といった太陽活動の影響を受ける商業部門に対して、タイムリーで信頼性の高い宇宙天気情報を提供するとのことです。

 

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Source

  • Image Credit: Solar Orbiter/EUI Team/ESA & NASA, ESA / J. Mai
  • ESA - New home for Earth’s protectors

文/松村武宏