オリオン宇宙船の緊急脱出システムに組み込まれるアボートモーターの地上燃焼試験の様子(Credit: Northrop Grumman)

【▲ オリオン宇宙船の緊急脱出システムに組み込まれるアボートモーターの地上燃焼試験の様子(Credit: Northrop Grumman)】

力強く噴き上がるオレンジ色の炎と煙を捉えたこちらの画像は、米国ユタ州のプロモントリーにあるノースロップ・グラマンの施設で現地時間3月31日に撮影されました。炎を噴き出しているのは「アボートモーター(abort motor)」と呼ばれる固体燃料ロケットエンジンです。画像は当日実施された地上燃焼試験の様子を写したもので、アボートモーターは上下を逆向きにした状態で架台に設置されていました。

アボートモーターはアメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した新型有人宇宙船「オリオン(Orion、オライオンとも)」「緊急脱出システム(LAS:Launch Abort System)」に組み込まれているエンジンの1つです。緊急脱出システムは打ち上げで何らかの問題が生じた際に、宇宙飛行士が搭乗する円錐形の「クルーモジュール」ロケットから分離して遠ざけるために使用されるシステムです。

フェアリング取付作業中のオリオン宇宙船。尖塔のような部分の中間から斜め下方向に飛び出ているのがアボートモーターのノズル(Credit: NASA/Kim Shiflett)

【▲ フェアリング取付作業中のオリオン宇宙船。尖塔のような部分の中間から斜め下方向に飛び出ているのがアボートモーターのノズル(Credit: NASA/Kim Shiflett)】

緊急脱出システムには上から順に「姿勢制御モーター(attitude control motor)」「投棄モーター(jettison motor)」それにアボートモーターという3つの固体燃料ロケットエンジンが組み込まれています。製造は姿勢制御モーターとアボートモーターをノースロップ・グラマンが、投棄モーターをエアロジェット・ロケットダインが担当しています。

一番上の姿勢制御モーターは緊急脱出システムの作動時に飛行姿勢を制御するためのもので、8つの小さなノズルが放射状に配置されています。その下にある投棄モーターは、オリオン宇宙船のクルーモジュールから緊急脱出システムを切り離す際に使用されます。

【▲ 現地時間2020年2月25日に実施された姿勢制御モーター地上燃焼試験の様子(動画)】
(Credit: NASAジョンソン宇宙センター)

そして一番下のアボートモーターは、非常時にクルーモジュールをロケットから引き離す際に稼働する、いわば緊急脱出システムのメインエンジンです。NASAによると、アボートモーターは約4秒間続く燃焼中に約40万ポンド(約1780キロニュートン)の推力を発揮するといいます。

【▲ 現地時間2022年3月31日に実施されたアボートモーター地上燃焼試験の様子】
(Credit: Northrop Grumman)

緊急脱出システムは2022年に実施される同計画最初のミッション「アルテミス1」でも用いられますが、アルテミス1はオリオン宇宙船および新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」の無人テスト飛行にあたるミッションなので、切り離し時の投棄モーターのみが稼働します。

しかし、アルテミス2はオリオン宇宙船に4名の宇宙飛行士が搭乗する、アルテミス計画初の有人ミッションです。もしも打ち上げ時に重大な問題が生じた場合には、冒頭の画像に写るアボートモーターが実際に点火されることになります。そのような状況にならないのが一番ですが、クルーの命を守るためにも、こうしたシステムを整えることは欠かせません。

ケネディ宇宙センターのロケット組立棟(VAB)から39B射点に向けて運ばれるSLS初号機と移動式発射台(Credit: NASA/Joel Kowsky)

【▲ ケネディ宇宙センターのロケット組立棟(VAB)から39B射点に向けて運ばれるSLS初号機と移動式発射台(Credit: NASA/Joel Kowsky)】

 

関連:NASA新型宇宙船「オリオン」初飛行に向けてフェアリングの取り付けが始まる

Source

  • Image Credit: Northrop Grumman
  • NASA - Final NASA Test Qualifies Orion’s Abort System for Crewed Artemis Missions
  • Northrop Grumman - Full-scale static test concludes qualification testing for Orion spacecraft abort motor

文/松村武宏