NASA新型ロケット「SLS」打ち上げ前のリハーサルが一旦中止される
ウェットドレスリハーサルの実施中に撮影された新型ロケット「SLS」(Credit: NASA/Joel Kowsky)
【▲ ウェットドレスリハーサルの実施中に撮影された新型ロケット「SLS」(Credit: NASA/Joel Kowsky)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間2022年4月4日、同4月1日からケネディ宇宙センターの39B射点で実施されていた新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」初号機の「ウェットドレスリハーサル」一旦中止されたことを明らかにしました。

SLS初号機はNASAの有人月面探査計画「アルテミス」最初のミッション「アルテミス1」に用いられるロケットです。アルテミス1はSLSおよびNASAの新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」無人テスト飛行にあたるミッションで、月周辺を飛行したオリオン宇宙船は打ち上げから4~6週間後に地球へ帰還します。

ウェットドレスリハーサル(wet dress rehearsal)は打ち上げ前に実施されるリハーサルで、NASAによれば約2日間に渡り本番と同様のタイムラインに沿って実施されます。カウントダウンはエンジン点火の直前まで進められますし、SLSのコアステージ(第1段)と上段(第2段)には極低温の推進剤(液体水素と液体酸素)が実際に充填されます。また、途中でカウントダウンをホールドしたり、一度充填した推進剤を抜き取ったりすることで、何らかの問題が生じた際に打ち上げを中断できることも確認されます。

SLS初号機のウェットドレスリハーサルは米国東部夏時間(以下同様)2022年4月1日17時、模擬的に設定された打ち上げ予定時刻(4月3日14時40分)の45時間40分前に始まりました。4月2日夜には39B射点に設置されている避雷塔に合計4回の落雷があったものの、カウントダウンは継続。打ち上げ予定時刻(模擬)まで8時間を切った6時45分には、推進剤の充填に“ゴー”の判断が下されました。

しかし、推進剤充填時に移動式発射台の密閉区画を加圧するファンに問題が見つかったため、ここでリハーサルは一時中断。NASAによれば、このファンは密閉区画から危険なガスを排除するためのもので、これが機能しなければ充填作業を安全に進められないといいます。その後ファンの問題は解消し、4月4日10時52分には新たに設定された打ち上げ予定時刻(模擬、4月4日18時2分)へのカウントダウンが再開されました。

再開後のリハーサルでは、まずSLSのコアステージに液体酸素を50パーセント充填することに成功しました。続いて液体水素を充填するために供給ラインの冷却が始まったものの、充填中にコアステージ内部の圧力を下げるベントバルブ(通気弁、逃がし弁)が閉じた位置のままになっていて、遠隔操作で開くことができない問題が発生。この問題を受けて、ウェットドレスリハーサルは一旦中止されることになりました。

NASAによるとベントバルブの問題はその後解消されましたが、日本時間4月7日午前の時点では、ウェットドレスリハーサルがいつ再開されるのかは明らかになっていません。なお、39B射点に隣接する39A射点では日本時間4月9日にスペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げが予定されているため、SLS初号機のウェットドレスリハーサル再開はクルードラゴンの打ち上げ後になるものと思われます。

ケネディ宇宙センター39A射点で打ち上げ準備中のファルコン9ロケット(左手前)と39B射点のSLS初号機(右奥)(Credit: NASA/Joel Kowsky)
【▲ ケネディ宇宙センター39A射点で打ち上げ準備中のファルコン9ロケット(左手前)と39B射点のSLS初号機(右奥)(Credit: NASA/Joel Kowsky)】

 

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  • Image Credit: NASA/Joel Kowsky
  • NASA Blogs - Artemis

文/松村武宏