ワンウェブがスペースXと契約締結、2022年中にも衛星打ち上げ再開へ
ケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースXの「ファルコン9」ロケット(Credit: SpaceX)
【▲ ケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースXの「ファルコン9」ロケット(Credit: SpaceX)】

英国の衛星通信会社ワンウェブ(OneWeb)は現地時間3月21日、米国の宇宙開発企業スペースX(SpaceX)との間で衛星の打ち上げに関する契約が締結されたことを発表しました。契約条件については明らかにされていません。

ワンウェブは多数の衛星から構成される「衛星コンステレーション」による高速・低遅延のインターネット通信サービス提供を目指しており、2020年2月から通信衛星の打ち上げを進めています。同社は最終的に648機の衛星を運用する予定で、打ち上げ済みの衛星数は2022年2月の時点で428機に達していました。

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同社の通信衛星は仏領ギアナのギアナ宇宙センターとカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から「ソユーズ」ロケットを使って打ち上げられてきましたが、2月24日に始まったウクライナに対するロシアの軍事侵攻の影響を受けて、現在ワンウェブの衛星打ち上げは全て中断しています。

直近では2022年3月5日にバイコヌール宇宙基地から36機の通信衛星が新たに打ち上げられる予定だったものの、ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスはワンウェブおよび同社に出資する英国政府に対して「衛星が軍事目的で使用されないことの保証」や「英国政府が保有するワンウェブの株式を手放す」ことを打ち上げの条件として提示。ワンウェブの取締役会はバイコヌールからの打ち上げを全て中断する決定を下し、3月4日には発射台からロケットが撤去されています。

【▲ バイコヌール宇宙基地31番射点から撤去される「ソユーズ2.1b」ロケット(Credit: Roscosmos)】

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ワンウェブとスペースXの衛星打ち上げ契約は、こうした情勢の下で締結されました。スペースXは自社の通信衛星からなる衛星コンステレーションを用いたインターネット通信サービス「スターリンク(Starlink)」を提供しています。スペースXは通信分野ではワンウェブと競合関係にあるものの、中断を余儀なくされているワンウェブの衛星打ち上げを宇宙開発企業として請け負う形になりました。

ワンウェブの発表によれば、スペースXとの契約に基づく最初の衛星打ち上げは2022年中に予定されています。ワンウェブのニール・マスターソンCEOは「スペースXのサポートに感謝します、この契約には宇宙の無限の可能性について我々が抱く共通のビジョンが反映されています。スペースXとの打ち上げ計画の下で、我々は衛星コンステレーションを完成させ、世界中に堅牢・安全・高速なインターネット接続を提供する予定です」とコメントしています。

 

Source

  • Image Credit: SpaceX
  • OneWeb - OneWeb to resume satellite launches through agreement with SpaceX

文/松村武宏