地球を取り囲むスペースデブリのイメージ図(Credit: ESA/ID&Sense/ONiRiXEL, CC BY-SA 3.0 IGO)

【▲ 地球を取り囲むスペースデブリのイメージ図(Credit: ESA/ID&Sense/ONiRiXEL, CC BY-SA 3.0 IGO)】

去る2021年12月1日に開かれたバイデン政権初の国家宇宙会議(NSC)の席上、座長を務めたカマラ・ハリス米国副大統領は宇宙空間における安全保障の重要性について強調しました。将来の宇宙空間における安全保障や持続可能性は、少なくとも90万個・8,000トン以上に及ぶスペースデブリ(宇宙ゴミ)に掛かっているといいます。

ところが、米国はこれまでスペースデブリの除去事業に乗り気ではありませんでした。米国のシンクタンク「Secure World Foundation」のBrian Weeden氏は、海外メディアのSpaceNewsが発行する「SpaceNews Magazine」2022年2月号に掲載された論説にて、その背景と米国がスペースデブリ除去事業で主導権を果たすための方策に言及しています。

オバマ政権下の2010年6月28日に策定されたアメリカの「国家宇宙政策(National Space Policy)」によると、宇宙空間に浮遊するスペースデブリの数は増加の一途を辿り、軌道上の人工衛星に衝突するリスクが高まっているといいます。これを受けて、リスクを低減するために宇宙空間に存在するスペースデブリを監視し、その数を最小限に抑えるために除去を行うといった、スペースデブリ対策事業を展開する必要性が記載されています。

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【▲ スペースデブリの推移を示すグラフ(Credit: 米国国家科学技術会議)】

Weeden氏は、前述の国家宇宙政策ではアメリカ航空宇宙局(NASA)と国防総省(DOD)に共同で「能動的なスペースデブリ除去(ADR: Active Debris Removal)」能力を開発することを課しているものの、スペースデブリの問題解決に向けた動きがほとんどなかったと主張します。

同氏はその理由について、DODにおけるスペースデブリ除去の優先度、宇宙空間の交通システム管理に対する連邦政府関係機関の責任の欠落、宇宙の軍事利用に対する国際社会の反応に向けた注意、中国などによる衛星破壊実験の実施・再稼働といった、政治的な要因や官僚主義的な事情が重なったためだと分析しています。

また、Weeden氏は、米国がスペースデブリ対策事業に躊躇しているあいだに、欧州・日本・英国スペースデブリを除去する事業や技術実証に対する支援を次々と打ち出したと指摘。こうした国際的なイニシアティブはスペースデブリ対策が米国以外の場所で主導されていることを示しており、米国も今すぐ行動する必要があると主張します。

【▲ カマラ・ハリス米国副大統領が座長を務めた国家宇宙会議の初会合の様子】
(Credit: NASA)

スペースデブリ除去事業が「成功」するために必要なこと

Weeden氏は、米国のスペースデブリ事業が成功するための要件をいくつか挙げています。

同氏は雇用・経済的な機会の創出・法的課題の克服はもとより、連邦政府による歳出を超えて持続可能な市場を創出しなければならないと指摘。Xプライズ財団による有人宇宙旅行コンテスト「Ansari X-Prize」や民間月探査コンテスト「Google Lunar X-Prize」のような一回限りの賞金支給では目標達成には不十分であり、米国航空宇宙局(NASA)が2010年から実施した商業乗員輸送プログラム(以下、CCDev)のような成功したプログラムをモデル化することが目標達成への近道だとしています。

CCDevは安全かつ信頼性が高く、しかも効率的なコストで宇宙空間へ乗員を輸送できる能力の開発・実証を行う民間企業を支援するために計画されました。同プログラムの下ではスペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」が2020年から運用を開始しています。NASAが20年に渡る時間をかけて一連のプログラムを遂行した結果、米国は政府による従来型の取り組みよりもはるかに安いコストで乗員を地球低軌道に運ぶ商業ベースの能力を得るに至ったわけです。

Weeden氏は米国連邦政府の役割について、将来に向けたイノベーションやコスト削減につながるような確固たる市場創出への「橋渡し」を担うことが重要だと主張。米国は大規模な投資を含むスペースデブリ除去事業の推進に力を入れ、宇宙における国際的なリーダーシップを発揮する必要があると、同氏は結論付けています。

 

Source

  • ・Image Credit: ESA/ID&Sense/ONiRiXEL
  • SpaceNews - How America Can Become a Leader in Cleaning Up Space
  • NASA(1) - NATIONAL SPACE POLICY of the UNITED STATES of AMERICA (issued in June, 2010)
  • NASA(2) - NATIONAL SPACE POLICY of the UNITED STATES of AMERICA (issued in December, 2020)
  • Secure World Foundation - The Evolution of U.S. National Policy for Addressing the Threat of Space Debris
  • ESA - Space debris by the numbers
  • National Science and Technology Council - NATIONAL ORBITAL DEBRIS RESEARCH AND DEVELOPMENT PLAN

文/Misato Kadono