【▲ バイコヌール宇宙基地31番射点から撤去される「ソユーズ2.1b」ロケット(Credit: Roscosmos)】

衛星通信会社「ワンウェブ(OneWeb)」は2022年3月3日(日本時間、以下特記無き限り同様)、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地における同社の衛星打ち上げ全てを一時的に停止することが取締役会で決定したとの声明を発表しました。ワンウェブの衛星は3月5日にも新たに36機が打ち上げられる予定でしたが、衛星を搭載した「ソユーズ2.1b」ロケットはバイコヌール宇宙基地の発射台から3月4日に撤去されています。

【▲ 取締役会の決定内容を伝えるワンウェブのツイート】

ワンウェブは自社の通信サービスを提供するために、648機の通信衛星からなる衛星コンステレーションの構築を地球低軌道で進めています。同社の衛星の打ち上げはバイコヌール宇宙基地およびフランス領ギアナのギアナ宇宙センターから「ソユーズ」ロケットを使って実施されており、打ち上げ済みの衛星数は2022年2月の時点で428機に達していました。

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2020年3月に経営破綻したワンウェブは、同年7月に英国政府とインドの企業バーティ・グローバルに買収されています。英国は欧州連合(EU)からの離脱によって欧州の衛星測位システム「ガリレオ」に関われなくなっており、将来的にはワンウェブを英国独自の測位システムとして利用する可能性も報じられていました。その英国は、2022年2月24日にウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシアに対して制裁を科しています。

【▲ ワンウェブ衛星の打ち上げ条件について言及したロスコスモスのツイート】

こうした事情を背景に、ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスは3月2日、「衛星が軍事目的で使用されないことの保証」および「英国政府が保有するワンウェブの株式を手放す」という2つの条件が満たされない限り、ワンウェブ衛星は打ち上げられないと宣言。3月3日にはロスコスモスのドミトリー・ロゴージン長官が、ワンウェブ衛星を搭載したソユーズ2.1bのフェアリングに描かれた国旗を隠す作業の様子をツイートしていました。

【▲ フェアリングに描かれた国旗が覆い隠される様子をシェアしたロゴージン長官のツイート】

いっぽう、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省のクワシ・クワーテン国務大臣は3月3日に「ワンウェブに関する交渉はありません、英国政府は同社の株式を売却しません」、3月4日にはワンウェブの声明を引用しつつ「英国政府はワンウェブの決定を支持します」とツイートしています。海外メディアのSpaceNewsによると、ワンウェブは欧州だけでなくアメリカ、日本、インドも選択肢に含めた代替案を検討しているとのことです。

なお、フランスに本社を置くアリアンスペースは現地時間3月4日、仏露合弁企業のスターセムと実施しているソユーズロケットの商業打ち上げが中断している現状について声明を発表。アリアンスペースはロシアに対する制裁を厳守しており、状況の評価や代替策の策定を進めるために顧客をはじめフランスや欧州の当局と緊密な連絡を取り合っているとしています。

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文/sorae編集部