ブルー・オリジンらが計画中の商用宇宙ステーション「オービタル・リーフ」の想像図(Credit: Blue Origin)

【▲ ブルー・オリジンらが計画中の商用宇宙ステーション「オービタル・リーフ」の想像図(Credit: Blue Origin)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は2021年7月に「商用地球低軌道開発プログラム」(以下、CLDプログラム)の公募を開始。入札した11の事業者のうち、商用宇宙ステーション開発の支援を受ける企業として、ブルー・オリジン、ナノラックス、ノースロップ・グラマンの3社が2021年12月に選ばれました。

今回、CLDプログラムの当落を左右した企業の評価内容が、NASAが公開した文書によって明らかになりました。落選した8社のなかには、国際宇宙ステーションへの乗員・物資輸送で活躍するスペースXも含まれていたことが判明しています。

■CLDプログラムにはスペースXも入札していたことが判明

CLDプログラムは、国際宇宙ステーション(ISS)に代わる商用宇宙ステーションを開発する民間宇宙企業数社に対して、2022年度から2025年度のあいだに4億ドル以上の資金援助を行うプログラムです。NASAは2021年12月2日に、商用宇宙ステーション計画を提案した11の事業者のなかからブルーオリジンら3社を落札したことを公表していましたが、この時点では落札されなかった事業者の情報は非公開でした。

2022年1月27日、NASAは米国政府が運営する入札システム「SAM(System for Award Management)」にて、CLDプログラムに入札した事業者の情報とその評価をまとめた文書を公開しました。同文書には、意義のあるコンセプトの定義や設計の成熟度を証明できなかったDEHAS LimitedおよびHamon Industriesの2社を除く9つの事業者について、技術的なアプローチと事業計画の両面で5段階評価を下し、その理由も書き添えられています。

NASAが9事業者に対して下した評価。青、緑、白、黄、赤の順で評価が高い(Credit: NASAの文書をもとに筆者作成)

【▲NASAが9事業者に対して下した評価。青、緑、白、黄、赤の順で評価が高い(Credit: NASAの文書をもとに筆者作成)】

選出されなかった企業の一つがスペースXです。これまでスペースXはCLDプログラムに入札したことを公開していませんでしたが、同社はNASAの「アルテミス」計画で採用された月着陸船「有人着陸システム(HLS)」に改良を加えたものを商用宇宙ステーションとして提案していたことが同文書から判明しました。

2021年4月に採用されたスペースXのHLSは、現在同社が開発を進めている大型宇宙船「スターシップ」の派生型で、大気圏再突入用のシステムを省く代わりに月面活動用のエアロックやエレベーターを備えています。

関連:NASAアルテミス計画の月着陸船にスペースXの「スターシップ」が選ばれる

NASAはスターシップのプロトタイプや実証計画がCLDプログラムに値する技術的成熟度をもつとして、スペースXに高評価を与えた模様です。その一方で、長期運用のためにペイロード(積載量)に関する情報や「環境制御・生命維持システム」(ECLSS)をどのように拡張するかなどについては詳細を欠いているとして、低評価を与えたようです。


【▲ スペースXが公開しているSN15飛行試験の配信アーカイブ】
(Credit: SpaceX)

ブルー・オリジンら3社はなぜ落札できたのか?

同文書には、ブルー・オリジンら3社が選ばれた理由も挙げられています。

NASAはブルー・オリジンの提案書に対し、拡張可能なモジュールや1人乗り宇宙船の実現等で弱点があると評価しました。一方、国際宇宙ステーション(ISS)のアメリカ側区画で用いられている「共通結合機構(CBM)」を採用することでより大きなペイロードを実現できることや、船外オペレーションのためのロボットアームの実装メンテナンスの柔軟性など、多くの技術的な強みがあると高評価を与えました。

ナノラックスの提案書に対しては、拡張可能なECLSSに弱点があると評価したものの、人工重力を発生させる装置の実現に向けて生物学遠心機(※)を組み込んだことや、宇宙ステーションを単一のモジュールとして設計したことで運用の初期段階から2人以上のクルーの乗船を可能とし、組み立ての複雑さを大幅に軽減したことなどを強みとして挙げています。

※…高速で回転することによって、DNAを分離・抽出する機器

ノースロップ・グラマンについては、CLDプログラムで要求されるより大きなペイロードの実現性やECLSSを満たすためには利用可能な電力が不足していることが弱点だと評価されました。一方で、4人の乗組員を収容可能にしたことで初期段階でもより多くのアクセスが可能になることや、将来の需要に応じて拡張できる余地を残したこと、メンテナンスのための船外活動の需要を減らしたことなど、多くの技術的な強みがあることを評価しています。

ノースロップ・グラマンが計画中の商用宇宙ステーションの想像図(Credit: Northrop Grumman)

【▲ノースロップ・グラマンが計画中の商用宇宙ステーションの想像図(Credit: Northrop Grumman)】

同文書によると、上述した提案書の評価をもとに、デューデリジェンス(投資するかどうかの事業評価)を行う3社を選定。少なくとも1つの商用宇宙ステーションが実現できるように、リスクを鑑みたポートフォリオを提供できたということです。

 

関連:ISS退役後の商業宇宙ステーションは?NASAが企画案を外部事業者から募る

Source

  • Image Credit: Blue Origin
  • SpaceNews - Relativity and SpaceX bid on NASA commercial space station competition
  • SAM - Selection Statement For Commercial LEO Destinations

文/Misato Kadono

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