こちらは欧州宇宙機関(ESA)の地球観測衛星が捉えた、アメリカ合衆国テキサス州ヘレフォード近郊の様子です。この地域は半乾燥気候ですが、地下の広大な帯水層(オガララ帯水層)から汲み上げた水を灌漑に利用して、トウモロコシ、小麦、大豆、玉ねぎといった農作物が栽培されています。
ESAによるとこの画像には、2019年3月17日~4月21日の期間に地球観測ミッション「Sentinel(センチネル)-2」で取得された正規化植生指数(NDVI※)のデータが用いられています。色は地上の植生の状態を示していて、赤・黄・緑は植生の成長の変化、白はこの期間に植生が豊かだった場所、黒は植生が乏しかった場所を示しているといいます。農地ごとの植生の様子が反映されたこの画像は、まるで農地が描き出したカラフルなパッチワークのようです。
※…人工衛星の観測データを使って植物の健康や成長といった状態を把握するために用いられている植生指標のひとつ
碁盤目状に整然と区画された土地が広がる様は圧巻ですが、農地の多くには円形の模様が現れています。これは「センターピボット」と呼ばれる灌漑システム特有の光景です。
センターピボットは農地の中央から伸ばされた長さ数百m~1kmもの長大なアームに多数のスプリンクラーが取り付けられているシステムで、アーム全体が円を描くように動きながら散水を行います。アームが描く円の外には水が届かないため、作物が育てられる範囲も円形になるというわけです。ESAによると、センターピボットは農業経営者による水需要の管理や水源保護に役立つ灌漑方法なのだそうです。
冒頭の画像はESAから2022年2月11日付で公開されています。
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Source
- Image Credit: contains modified Copernicus Sentinel data (2019), processed by ESA, CC BY-SA 3.0 IGO
- ESA - Hereford, Texas
- USGS - Center pivot irrigation system in Arizona, USA
文/松村武宏