米東部標準時2022年2月3日に打ち上げられたファルコン9ロケット。搭載していたスターリンク衛星の多くが失われたとみられる(Credit: SpaceX)

【▲ 米東部標準時2022年2月3日に打ち上げられたファルコン9ロケット。搭載していたスターリンク衛星の多くが失われたとみられる(Credit: SpaceX)】

スペースXは現地時間2月8日、その5日前に打ち上げられた同社のスターリンク衛星49機のうち、最大40機が大気圏に再突入して失われる見込みであることを明らかにしました。一部は発表の時点ですでに大気圏へ再突入したとみられています。同社によると、原因は太陽活動によって引き起こされた地磁気嵐とされています。

■地磁気嵐にともなう大気膨張により約40機のスターリンク衛星を喪失

このスターリンク衛星は、アメリカ東部標準時2022年2月3日13時13分にフロリダ州のケネディ宇宙センターから「ファルコン9」ロケットを使って打ち上げられたものです。打ち上げそのものは順調に進み、49機の衛星群は高度約210kmの地球低軌道に投入されました。スターリンク衛星は高度約550kmの軌道で運用されているため、通常であれば、この高度を目指して軌道を上昇させていくことになります。

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いっぽう、今回の打ち上げと同時期に、地球では地磁気嵐が発生しました。地磁気嵐は太陽風によって引き起こされる地磁気の乱れで、通信網、電力網、人工衛星の運用などに様々な影響をもたらすことがあります。その影響の一つが、大気の膨張です。

大気圏と宇宙空間の境界高度100km(国際航空連盟など)または高度80km(米空軍など)と定義されていますが、これはあくまでも宇宙に進出するようになった人類が定めたラインです。高度80~500km付近は熱圏、高度500~1万km付近は外気圏と呼ばれる地球の大気圏の一部で、希薄ながらも大気が存在しています。つまり、地球低軌道(高度2000km以下)を飛行する人工衛星は、熱圏や外気圏を飛行していることになります。

地球大気の鉛直構造(対流圏から熱圏まで)を示した図(Credit: JAXA)

【▲ 地球大気の鉛直構造(対流圏から熱圏まで)を示した図(Credit: JAXA)】

希薄といえども大気が存在するわけですから、地球低軌道を飛行する人工衛星は抵抗を受けます。大気から抵抗を受ける人工衛星は少しずつ減速し、高度が徐々に下がっていきます。そのうえ、太陽フレアや地磁気嵐が生じると、地球の大気は加熱されて膨張します。すると、地球低軌道でも大気密度が上昇するため、人工衛星は大気からより強い抵抗を受けるようになってしまうのです。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、今回の磁気嵐の規模は5段階(G1~G5)のうち一番低いG1で、人工衛星の運用には軽微な影響が及ぶ可能性があると同庁は解説しています。しかし、打ち上げ直後のスターリンク衛星が投入されたは高度210kmという比較的低い軌道だったため、磁気嵐の影響を強く受けることになってしまったようです。スペースXによると、今回打ち上げられた衛星は、過去の打ち上げ時と比べて最大50パーセント強い大気抵抗を受けたといいます。

スターリンクの運用チームは衛星の動作をセーフモードに切り替えて、フラットなパネル形状の機体が大気から受ける抵抗を最小化するように姿勢を調整したものの、衛星の多くはこの状況を脱することができませんでした。前述のように、打ち上げられた49機のうち最大40機が発表時点で大気圏に再突入したか、再突入する見込みとされています。

軌道上物体に詳しい天体物理学者のJonathan McDowellさんによると、2月13日までに失われた衛星の数は38機に上るようです。2022年1月の時点でスターリンク衛星の打ち上げ総数は2000機を超えており、今回失われたのはそのうちの2パーセント程度となります。なお、スペースXは発表において、スターリンク衛星は大気圏再突入時に消滅するよう設計されており、このことは衛星の部品が地上に落下しないことを意味すると言及しています。

 

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文/松村武宏