2021年12月25日(日本時間、以下同様)に打ち上げられた宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」は、初期宇宙で誕生した宇宙最初の世代の星(初期星、ファーストスター)や最初の世代の銀河、太陽系外惑星の観測などで活躍することが世界中の研究者から期待されている新世代の宇宙望遠鏡です。
ウェッブ宇宙望遠鏡は地球と太陽の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のひとつ「L2」(地球からの距離は約150万km)まで1か月ほどかけて移動し、機器の冷却や較正を終えた後(打ち上げから約6か月後)に観測を始める予定です。NASAによると、ウェッブ宇宙望遠鏡は打ち上げ後も順調に飛行を続けているようです。
クールー(フランス領ギアナ)のギアナ宇宙センターから打ち上げられたウェッブ宇宙望遠鏡は、欧州の「アリアン5」ロケットによってL2へと向かう軌道へ投入されました。12月28日16時現在、ウェッブ宇宙望遠鏡は地球から44万km以上離れた場所を秒速約1.1kmで飛行しており、すでに月よりも遠くへ達しています。
NASAによると12月26日と28日にはあらかじめ計画されていた中間軌道修正のためのエンジン噴射(MCC1aおよびMCC1b、MCCはMid Course Correctionの略)が行われており、12月27日未明には科学データ送信用の高利得アンテナの展開と動作テストが実施されました。間もなく打ち上げから丸3日を迎えるウェッブ宇宙望遠鏡では、サンシールド(日除け)の展開が始まろうとしています。
ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線の波長で観測を行いますが、赤外線は天体だけでなく熱を持つ物体からも放射されます。宇宙望遠鏡自体も例外ではなく、主鏡や副鏡、観測装置、機体の温度をできるだけ低く保っておかないと、自身が放射した赤外線が観測の妨げになってしまいます。そこでウェッブ宇宙望遠鏡には、鏡や機体を温める太陽光を遮断するためにサンシールドが搭載されています。
サンシールドはテニスコート並のサイズ(約21m×14m)がありますが、そのままではロケットのフェアリング(ロケットの先端にある人工衛星や探査機などを搭載する部分、アリアン5のフェアリングは直径5m)に収まらないので、一旦畳んだ状態で打ち上げてから宇宙空間で展開する構造になっています。そのサンシールドの展開がいよいよ始まるというわけです。
畳まれているのはサンシールドだけではなく、主鏡や副鏡なども順を追って展開しなければウェッブ宇宙望遠鏡は観測を始めることができません。まずはその第一段階となるサンシールドの展開が無事完了することを願います。
【▲ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げから主鏡の展開完了までを示した動画(Credit: ESA/ATG medialab)】
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Image Credit: Adriana Manrique Gutierrez, NASA Animator
Source: NASA
文/松村武宏