スペースX、初の民間人だけの宇宙飛行ミッション 360度見渡せるドームを宇宙船に設置
世界初の民間人だけでクルーが構成されるInspiration4ミッション(Credit: SpaceX Twitter)

スペースXは、日本時間9月16日午前9時2分(予定)に「Inspiration4」ミッションの打ち上げを行います。

このミッションは世界で初めてクルー全員が民間人で構成されており、宇宙飛行士は搭乗しません。クルーはスペースXが開発した有人宇宙船「Crew Dragon」(クルードラゴン)レジリエンス号に乗り込み、ファルコン9ロケットで地球を周回する軌道に投入されます。また打ち上げはアポロ計画やスペースシャトル計画で使用され、宇宙開発の歴史を作ってきたケネディー宇宙センター39A発射台で行われます。

そしてこのミッションでは国際宇宙ステーション(ISS)へドッキングせずに、3日間地球を周ります。その後フロリダ沖へ着水し、帰還します。なおスペースXにとって4回目の有人宇宙飛行ミッションとなります。

世界初の民間人だけでクルーが構成されるInspiration4ミッション(Credit: SpaceX Twitter)
【▲ 世界初の民間人だけでクルーが構成されるInspiration4ミッション(Credit: SpaceX Twitter)】

Inspiration4ミッションで使用されるクルードラゴン宇宙船・レジリエンス号は、昨年11月に打ち上げられて今年4月に地球へ帰還した「Crew-1」ミッションで用いられた機体です。JAXAの宇宙飛行士である野口聡一飛行士が搭乗した宇宙船でもあります。地球へ帰還後、慎重に検査や再点検、整備が行われました。

今回のミッションでは、宇宙を360度見渡せる透明のドームが設置されます。これまでのクルードラゴンでは、ISSとのドッキングポートが取り付けられていた場所に置かれます。このドームに入ることができるのは1人までとされており、宇宙と地球の光景を1人で独占できるのです。

宇宙船の上部に見えるのが360度見渡せるドーム(Credit: スペースX)
【▲ 宇宙船の上部に見えるのが360度見渡せるドーム(Credit: SpaceX)】

また、クルードラゴン宇宙船の飛行高度は高度575kmです。これは国際宇宙ステーションの高度420km、ハッブル宇宙望遠鏡の540kmより高いです。

クルードラゴンが周回する軌道はISSよりもはるかに高いことがわかる(Credit: SpaceX Website)
【▲ クルードラゴンが周回する軌道はISSよりもはるかに高いことがわかる(Credit: SpaceX Website)】

このミッションは小児がんや白血病などの研究と治療を行っているセント・ジュード小児研究病院を支援する目的で行われます。一部の費用が病院へ寄付されて、小児がんの研究に役立てられます。

ここから宇宙へ行く搭乗者4人を紹介します。「ジャレッド・アイザックマン氏」「ヘイリー・アルセノー氏」「シアン・プロクター氏」「クリス・センブロスキ氏」です。

ジャレッド氏は、決済処理企業Shift4Paymentの創業者兼CEOで、コマンダーを務めます。航空機などの飛行に熟知しており、複数の世界記録を持ちます。クルードラゴンの座席を自費で購入し、3人の参加者を招待したミッションの中心的な役割を担います。

ヘイリー氏は、現在セント・ジュード小児研究病院で看護師をしています。彼女は10歳の時に骨肉腫を患い、同病院に入院し治療を行いました。この時に腫瘍を取り除いた場所に代わりとして人工義肢(prosthesis)を装着しました。世界で初めて人工義肢をつけたクルーが宇宙飛行を行います。

シアン氏は、地球科学者であり起業家でもあります。彼女はコンテスト企画により選出されました。幼い頃から宇宙へ行きたいという夢を持っていました。彼女の父はNASAに務めており、アポロ11号の月面着陸時にはグアムにある追跡局の職員として勤務していました。彼女は2009年にNASAの宇宙飛行士選抜に応募するも残念ながら選ばれなかったということです。

クリス氏は、米空軍に所属後、現在は米航空宇宙企業ロッキード・マーティンに勤めています。セント・ジュード小児研究病院に寄付をした人の中から選出されたクルーです。

Inspiration4ミッションは、民間企業による宇宙旅行の幕開けとなりそうです。2021年7月からヴァージン・ギャラクティック社の飛行やブルーオリジン社による宇宙旅行などが行われています。今の時点では莫大な金額を支払った人しか宇宙へ行くことができませんが、現在のミッションの成功が宇宙旅行の価格とハードルを下げ、宇宙旅行が簡単にできる時代へさらに近づくのかもしれません。

 

Image Credit: SpaceX Twitter/SpaceX Website/SpaceX
Source: SpaceX/Inspiration 4/Space.com
文/出口隼詩