アルテミス1ミッションの打ち上げに向けてフェアリングの取り付けが始まった新型宇宙船「オリオン」(Credit: NASA/Kim Shiflett)
【▲ アルテミス1ミッションの打ち上げに向けてフェアリングの取り付けが始まった新型宇宙船「オリオン」(Credit: NASA/Kim Shiflett)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年の有人月面探査再開を目指す「アルテミス」計画を進めており、今年11月には無人のテスト飛行となる最初のミッション「アルテミス1」の実施が予定されています。現在フロリダのケネディ宇宙センターでは、アルテミス1で使用される有人宇宙船「オリオン」と新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」の組み立て作業が行われています。

現地時間8月20日にはオリオン宇宙船の緊急脱出システム(LAS)を構成するフェアリングの取り付けが始まりました。オリオン宇宙船の先端部分に取り付けられている緊急脱出システムは、打ち上げで何らかの問題が生じた際に宇宙飛行士が搭乗する円錐形のクルーモジュールをロケットから分離して遠ざけるために使用されるもので、打ち上げに問題がなければ途中で切り離されます。

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緊急脱出システムの一部であるフェアリングには、打ち上げ時の激しい振動や音からクルーモジュールを保護する役割があります。フェアリングは4枚の湾曲したパネルで構成されており、そのうち1枚には宇宙飛行士がクルーモジュールに搭乗するためのハッチが設けられています。無人の飛行試験ミッションであるアルテミス1では緊急脱出システムは使われませんが、有人での飛行試験ミッションとなる「アルテミス2」や、1972年の「アポロ17号」以来の有人月面探査が実施される「アルテミス3」ミッション以降は、打ち上げ時の命綱として欠かせないものとなります。

コアステージに搭載されるSLS(ブロック1)第2段の「ICPS」(Credit: NASA/Kim Shiflett)
【▲ コアステージに搭載されるSLS(ブロック1)第2段の「ICPS」(Credit: NASA/Kim Shiflett)】

いっぽう、アルテミス1ミッションでオリオン宇宙船を打ち上げるSLS(ブロック1)の組み立て作業は、第2段の「ICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)」をコアステージに搭載する段階まで完了しています。今後はオリオン宇宙船とSLSをつなぐオリオンステージアダプターがICPSに取り付けられた後に、いよいよ緊急脱出システムを備えたオリオン宇宙船が搭載されることになります。

■アルテミス1には日本で開発された超小型探査機も2機相乗り

なお、アルテミス1で打ち上げられるSLSには相乗りする合計13機の超小型衛星(CubeSat)が搭載されますが、このうち2機は日本で開発されたものとなります。

その1機「OMOTENASHI」(おもてなし:Outstanding MOon exploration Technologies demonstrated by NAno Semi-Hard Impactor)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した超小型探査機(6Uサイズ)で、質量12.6kgと小型ながらも衝撃吸収材を使った月面着陸を目指します。

着陸に向けて固体燃料ロケットモーターを点火した超小型探査機「OMOTENASHI」を描いた想像図(Credit: JAXA)
【▲ 着陸に向けて固体燃料ロケットモーターを点火した超小型探査機「OMOTENASHI」を描いた想像図(Credit: JAXA)】

また、もう1機の「EQUULEUS」(エクレウス:EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft)はJAXAと東京大学が開発した深宇宙探査機(6Uサイズ)で、気化させた水を噴射することで推力を得つつ地球から見て月の裏側にあるラグランジュ点「L2」に向けて飛行し、地球のプラズマ圏の観測、月面に衝突する小隕石の閃光検出、探査機周辺の塵の検出を行う予定です。

完成した深宇宙探査機「EQUULEUS」(Credit: JAXA/ISAS)
【▲ 完成した深宇宙探査機「EQUULEUS」(Credit: JAXA/ISAS)】

 

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Image Credit: NASA
Source: NASA / JAXA宇宙科学研究所
文/松村武宏

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