アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間6月20日、国際宇宙ステーション(ISS)に6基増設される予定の新しい太陽電池アレイ「iROSA(ISS Roll-out Solar Array)」のうち、1基の設置と展開が完了したことを発表しました。
今回設置されたiROSAはボーイング製の新型太陽電池アレイで、日本時間6月4日に打ち上げられたスペースXの無人補給船「カーゴドラゴン」に搭載されてISSに運ばれた2基のうちの1つです。
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日本時間6月16~17日と6月20~21日に実施されたNASAのシェーン・キンブロー宇宙飛行士と欧州宇宙機関(ESA)のトマ・ペスケ宇宙飛行士による2回の船外活動において、カーゴドラゴンによって運ばれたiROSAのうち1基のP6トラスへの設置および展開作業が行われました。NASAによると、展開されたiROSAは良好に機能しているとのこと。6月25日にはもう1基のiROSAを設置・展開するための船外活動が予定されています。
1998年に建設が始まり2011年に大規模な構成要素の組み立てが完了したISSは、現在8基の太陽電池アレイ(2000年12月から2009年3月にかけて設置)が供給する電力によって稼働しています。しかし、耐用年数が15年とされる既存の太陽電池アレイは一部がその年数を超えるか迎えつつあり、NASAによると現在の発電能力は1基あたり17~23キロワットとされています。
iROSAの設置は、太陽電池アレイの経年劣化によって低下しているISSの発電能力を底上げするために計画されました。今回1基の展開が完了したiROSAは、既存の太陽電池アレイ(1基のサイズは35.5m×11.6m)よりも小さい18.2m×6mというサイズながらも、1基あたり20キロワットの発電能力があります。
ISSの太陽電池アレイは、アレイ自身や土台となっているトラスを回転させることで、受光面の向きを変えられる構造になっています。太陽を追尾したり発電量を調整したりするための既存のシステムを最大限活用するため、iROSAは既存の太陽電池アレイの受光面に直接触れないよう角度を付けつつ、手前に重なるように設置されます。既存の太陽電池アレイは一部が隠されてしまうものの、それでも6基すべてのiROSAを設置し終えたISSの発電能力は2~3割の増強が見込まれています。
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Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏