2021年6月17日、JAXA宇宙科学研究所で、「はやぶさ2」の持ち帰った小惑星リュウグウのサンプルを外部研究機関に引き渡すにあたっての会見が開催されました。
サンプルはこれまで、計画に従ってJAXAで半年間の初期記載作業を行っていましたが、作業を終えたことから、次なる段階「Phase2」(フェーズ2)と「初期分析」に進むことになりました。ともに外部研究機関と協力をして分析や技術開発を進めていくことになるため、5月31日~6月28日にかけて、準備が整い次第各チームにサンプルを引き渡しています。
この日は、「フェーズ2」の一部を担当するPhase2キュレーション高知チーム(代表は海洋研究開発機構(JAMSTEC)高知コア研究所の伊藤元雄主任研究員)への引き渡しが行われました。サンプルは理化学研究所が保有する大型放射光施設SPring-8をはじめ、国内の様々な研究機関での分析が始まります。チーム分けについては、以前の記事(はやぶさ2サンプル分析の現状と今後の計画)で述べました。
引き渡しを受け、初期分析チームのとりまとめを担当する東京大学の橘省吾教授は「複数のチームが協同するのはオーケストラのようなもので、全体の分析が揃ってハーモニーを作り出す。ひとつひとつのチームのどれがより重要かということはなく、揃って初めて科学目標を達成できる」とその意義を述べていました。
輸送容器に収められたサンプルも公開されました。実物を初めて肉眼で見ましたが、漆黒と言っていいほどの黒さでした。
この引き渡しと同時に、サンプルの採取を行っているJAXA地球外試料キュレーションセンター(ESCuC)「はやぶさ2」用クリーンチャンバの報道向け公開も行われました。室内は気温22℃、湿度は40~60%に調節されており、やや暑く感じるくらいとのこと。この時は先端を輪にした治具を使い、1mm程度の細かいサンプルを取り分ける作業を行っていました。
このあと、各チームは連携しながら最大1年をかけてキュレーション技術の開発やサンプル分析を行い、リュウグウサンプルを用いた最初の論文に取り組んでいきます。
初代「はやぶさ」と違い、「はやぶさ2」は、化学分析で結果が出て初めてミッションの完全達成となります。1年をかけた、フルサクセスへの最後の道のりが始まったところです。
Image Credit: 金木利憲
文/金木利憲