ESAが選定した「EnVison」は、地球と金星はなぜこれほどまでに異なるのか、その理由に迫ることを目的としたミッションだ(Credit: NASA / JAXA / ISAS / DARTS / Damia Bouic / VR2Planets)

【▲ ESAが選定した「EnVison」は、地球と金星はなぜこれほどまでに異なるのか、その理由に迫ることを目的としたミッションだ(Credit: NASA / JAXA / ISAS / DARTS / Damia Bouic / VR2Planets)】

欧州宇宙機関(ESA)は6月10日、長期プログラム「コスミック・ビジョン(Cosmic Vision)」の下で検討が進められていた5番目の中型クラス(Medium-class)ミッションについて、金星を周回探査する「EnVision」を選定したことを発表しました。

ESAにとって2014年にミッションを終えた「ビーナス・エクスプレス」以来の金星探査となるEnVisionは、金星内部のコア(核)から大気までを調査することで、金星の地質学的進化の性質と現状および大気との関係を見極め、どうして金星と地球の環境は異なるのかどのようにして異なる環境になったのかを理解することを目指すミッションです。

探査機には低周波数の電波で地下の様子を探るレーダーサウンダー「SRS」(Subsurface Radar Sounder)、火山活動に関連した大気中の微量ガスや表面組成を調査する分光観測装置「VenSpec」(観測対象と波長が異なるVenSpec-M、VenSpec-H、VenSpec-Uの3台で構成)、金星の内部構造と重力場や大気の構造と組成を調べる電波科学実験装置(Radio Science Experiment)が搭載されます。また、EnVisionミッションのパートナーであるアメリカ航空宇宙局(NASA)からは、1ピクセルあたり10mもしくは30mの解像度で地表を観測できる合成開口レーダー(SAR)「VenSAR」が提供されます。

これらの機器を使った高解像度の観測を行うために、EnVisionでは92分で金星を1周する高度220×540kmの軌道に探査機を投入することが計画されています。EnVisionの打ち上げは早ければ2031年が予定されていて、打ち上げから約15か月後に金星へ到着。大気を利用した空力ブレーキを実施することで、到着から16か月後に所定の軌道へ入るとされています。

EnVisonの探査機を描いた想像図(Credit: ESA/VR2Planets/DamiaBouic)

【▲ EnVisonの探査機を描いた想像図(Credit: ESA/VR2Planets/DamiaBouic)】

金星の大気は二酸化炭素が主成分で、空は硫酸の厚い雲に覆われており、地表は温度が摂氏約460度、気圧が約90気圧という環境です。しかし、かつての金星には海が存在していた可能性が指摘されており、ビーナス・エクスプレスの観測データは現在も火山活動が続いている可能性を示しています。過去の金星には海があって生命が存続することもできたのか、金星では今も地質活動が続いているのか、金星はどのような歴史を経て現在のような姿になったのか、そして金星は地球もまた壊滅的な温室効果に陥ることを予言しているのか。EnVisionはこれらの疑問に取り組むことになります。

なお、金星探査に関しては、先日NASAが「VERITAS」および「DAVINCI+」2つのミッションを選定したことを発表しています。両ミッションの探査機は2028年~2030年の打ち上げが予定されており、同時期に始まる3つの新たな金星探査ミッションはこれまでにない包括的な研究の機会をもたらすだろうとESAは言及しています。

 

関連:金星の大気分析や地表の撮影を予定! NASAの新たな金星探査ミッション「DAVINCI+」

Image Credit: ESA
Source: ESA / NASA/JPL
文/松村武宏

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