アメリカ航空宇宙局(NASA)とスペースXは、国際宇宙ステーション(ISS)に補給物資を運ぶミッション「CRS-22」の打ち上げ実施を2021年6月に予定しています。無人補給船「ドラゴン」22号機による今回の補給ミッションではどのような物資がISSに運ばれるのか、その一部をNASAが紹介しています。

■光るダンゴイカと“最強生物”クマムシ

発光細菌と共生関係にあるダンゴイカ(未成熟)(Credit: Jamie S. Foster, University of Florida)
【▲ 発光細菌と共生関係にあるダンゴイカ(未成熟)(Credit: Jamie S. Foster, University of Florida)】

今回ISSには実験のために2種類の動物が運ばれます。そのうちの1つであるダンゴイカは海洋性の発光細菌共生関係にあるイカで、身を守るためにその光を利用しているといいます。ISSに運ばれたダンゴイカと発光細菌は、宿主の動物と有益な微生物の共生関係に対する微小重力の影響を調べる研究に貢献します。

この実験の主任研究者であるJamie Foster氏は「動物は健康な消化器系や免疫系を維持するために微生物に頼っていますが、宇宙飛行によってこの有益な相互作用がどのように変化するのかは完全には理解されていません。動物の健康におけるこのような重要な問題に取り組むために、私たちは暗闇で光るダンゴイカを利用します」と語っています。

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幅広い環境に生息するクマムシ(Credit: Thomas Boothby, University of Wyoming)
【▲ 幅広い環境に生息するクマムシ(Credit: Thomas Boothby, University of Wyoming)】

もう1つの動物はクマムシです。地球上のさまざまな場所に生息しているクマムシは長期間の冷凍状態放射線への曝露といった過酷な環境にも耐えることが知られていて、その観点から「地上最強の生物」などと表現されることもあります。実験ではISSの微小重力環境で世代を重ねたクマムシの遺伝子発現が変化する様子を調べることで宇宙環境で活性化する遺伝子を特定し、長期間の宇宙飛行における環境ストレスの対策や治療法に関する将来の研究に役立てることが期待されています。

クマムシを用いる実験の主任研究者Thomas Boothby氏は「クマムシが宇宙飛行中の環境でどのように生存・繁殖するのか、その秘訣から何を学べるのか、そしてそれを宇宙飛行士を保護するために適用できるかどうかを理解したいのです」と語っています。

■ISSに追加の電力を供給する新しい太陽電池

ドラゴン補給船のトランクに搭載されたiROSA(Credit: NASA)
【▲ ドラゴン補給船のトランクに搭載されたiROSA(Credit: NASA)】

また、CRS-22では、太陽電池の経年劣化により低下しつづけているISSの発電能力を補うために増設される「iROSA(ISS Roll-out Solar Array)」と呼ばれる太陽電池も運ばれます。

iROSAは既存の太陽電池に重ねるようにして合計6基が取り付けられる予定で、今回はそのうちの2基がドラゴン補給船後部のトランク(非与圧部)に収納されて運ばれます。ロール状に巻き取られたコンパクトな状態で運ばれたiROSAは、宇宙飛行士の船外活動によって取り付けられた後に展開され、ISSに追加の電力を供給することになります。

【▲ 6基すべてのiROSAを増設し終えたISSを描いた想像図(Credit: NASA/Johnson Space Center/Boeing)】

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■ポータブル超音波デバイスや腎臓結石など医療に関する実験も

この他にもCRS-22では、宇宙船内で用いられる医療用ポータブル超音波デバイス、仮想現実(VR)と触覚を利用した遠隔操作用のインターフェイス、水と農薬の使用量削減を目指す丈夫なワタ、腎臓結石につながり得る微結晶の形成に対する微小重力の影響の調査などに関する実験装置も運ばれます。CRS-22の打ち上げは日本時間2021年6月4日2時29分(悪天候などの理由で遅れる可能性あり)が予定されています。

 

Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏

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