【▲ 大気圏に再突入した新型宇宙船「オリオン」を描いた想像図(Credit: NASA)】

こちらはアメリカ航空宇宙局(NASA)の新型有人宇宙船「オリオン」地球の大気圏へ再突入する様子を描いた想像図です。

現在NASAは有人月面探査計画「アルテミス」の準備を進めています。宇宙飛行士が地球と月周辺を往復するために搭乗するオリオン宇宙船や、オリオン宇宙船などの打ち上げに使われる新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」の開発も大詰めを迎えており、NASAは今年後半にオリオン宇宙船とSLSの無人テスト飛行「アルテミス1」ミッションの実施を目指しています。

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アルテミス1では、SLSを使って打ち上げられた無人のオリオン宇宙船が月周辺まで飛行した後に地球へ帰還します。26~42日が予定されているこのミッションはオリオン宇宙船にとって総合的なテストとなりますが、NASAによると、その最終段階となる地球の大気圏への再突入時には「Skip Entry」(スキップエントリー、スキップ再突入)と呼ばれる操縦方法がテストされる予定です。スキップエントリーとは、水切り遊びの小石のように、オリオン宇宙船が途中で一度高度を上げる再突入方法です。

■大気圏再突入後に一度上昇することで飛行距離を調整

半世紀前のアポロ計画で帰還した司令船は、再突入後に最大で約2800km(1500海里)飛行した後に着水しました。いっぽうアルテミス計画では、再突入したオリオン宇宙船が揚力を利用して一旦上昇することで大気から受ける抗力を減らし、最大で約8900km(4800海里)飛行することが計画されています。上昇後の高度をコントロールすれば飛行距離を調整できるため、月からいつ帰還し、どこで大気圏に突入しても、オリオン宇宙船は定められた海域へ正確に着水できるといいます。

地球を周回する国際宇宙ステーション(ISS)から帰還する場合、適切なタイミングで再突入することで着陸・着水するエリアを選ぶことができるため、宇宙飛行士を回収するのが比較的容易です。いっぽう、月を離れてから地球を周回することなく大気圏に直接再突入したアポロ計画の司令船の場合、着水エリアはミッションによって北太平洋から南太平洋まで分散しており、米海軍は宇宙飛行士を回収するために複数の艦船を広範囲に配置しなければなりませんでした。

アルテミス計画もアポロ計画と同じように、月から帰還したオリオン宇宙船は大気圏へ直に再突入しますが、少ない艦船で迅速な回収を実現させるために、着水エリアはカリフォルニア州サンディエゴの沖合約80kmの海域に設定されています。スキップエントリーによる飛行距離の調整は、この海域へ降りるために必要な操縦方法というわけです。また、スキップエントリーでは再突入が2段階に分かれることになるため、宇宙飛行士の身体にかかる加速度や宇宙船の加熱といった負担を軽減する効果もあるといいます。

NASAによると、スキップエントリーの発想そのものはアポロ計画の頃からあったものの、技術的な制約から当時は実現しませんでした。数か月後に予定されているアルテミス1は、打ち上げから着水まで目が離せないミッションになりそうです。

【▲ 月から帰還する宇宙船の高度(縦軸、フィート)と飛行距離(横軸、マイル)を示したグラフ。アポロ宇宙船(緑色)の飛行距離と比べて計画されているオリオン宇宙船(水色と青色)の飛行距離は長く、調整も可能とされる(Credit: NASA)】

 

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Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏

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