ドッキング場所を変更するために国際宇宙ステーション(ISS)を一時離れたクルードラゴン「レジリエンス」(Credit: NASA TV)

【▲ ドッキング場所を変更するために国際宇宙ステーション(ISS)を一時離れたクルードラゴン「レジリエンス」(Credit: NASA TV)】

現在、高度約400kmを周回する国際宇宙ステーション(ISS)には宇宙航空研究開発機構(JAXA)の野口聡一宇宙飛行士を含む7名の宇宙飛行士が滞在しています。日本時間4月23日にはJAXAの星出彰彦宇宙飛行士ら4名が乗り込んだスペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」運用2号機「エンデバー」がISSに到着する予定となっており、わずか5日間ほどですが、2010年以来11年ぶりに2人の日本人宇宙飛行士がISSで顔を揃えることになりそうです。

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星出飛行士が搭乗するクルードラゴン「エンデバー」の到着に先立ち、ISSでは日本時間4月5日クルードラゴン運用初号機「レジリエンス」の移動作業が行われました。2020年11月に野口飛行士とアメリカ航空宇宙局(NASA)の3名の宇宙飛行士を乗せてISSに到着したクルードラゴン「レジリエンス」はISSの前方に設置されている「IDA(国際ドッキングアダプター)」にドッキングしていましたが、40分ほどの短い飛行を経てISSの上方(天頂に面した側)にあるもう1つのIDAへと移動しています。

クルードラゴンは自動ドッキングに対応していますが、もしも移動作業を無人で実施し再ドッキングができなくなった場合、4名が地球に帰還したり万一の際にISSから避難したりするための手段を(一時的にせよ)失うことにもなりかねません。そのため、今回の移動作業では万が一のケースを想定し、そのまま帰還する可能性も考慮した上で、クルードラゴン「レジリエンス」に搭乗してきた野口飛行士をはじめNASAのマイケル・ホプキンス飛行士ビクター・グローバー飛行士シャノン・ウォーカー飛行士の4名が乗り込んだ有人での作業として実施されました。

▲移動作業に先立ちスペースXの宇宙服に身を包む4名の写真をシェアした野口飛行士のツイート▲

少しややこしいのですが、今回のクルードラゴン「レジリエンス」の移動は、2021年6月に予定されている無人貨物船「カーゴドラゴン」による補給ミッション「CRS-22」に備えるための作業でした。

CRS-22では今年以降ISSに合計6基増設されるボーイング製太陽電池のうち1基が運ばれる予定です。太陽電池は巻き取られた状態でカーゴドラゴンの機体後部にある「トランク」と呼ばれる非与圧部に収納され、ドッキング後にISSのロボットアーム「カナダアーム2」を使って取り出されることになります。

6基の太陽電池が増設された国際宇宙ステーションを描いた想像図(Credit: Boeing)

【▲ 6基の太陽電池が増設された国際宇宙ステーションを描いた想像図(Credit: Boeing)】

クルードラゴンとカーゴドラゴンがドッキングできるIDAは、ISSの第2結合部「ハーモニー」の前方および上方に設置されている2つの与圧結合アダプター(PMA)の先端にそれぞれ取り付けられていますが、ISSの前方にドッキングするとカナダアーム2がトランク内部に届かず搭載物を取り出せません。そのため、2020年12月に打ち上げられた1つ前の補給ミッション「CRS-21」と同じように、CRS-22もISS上方のIDAにドッキングする必要があります。

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野口飛行士らが乗ってきたクルードラゴン「レジリエンス」はISSの前方にドッキングしていたので上方のIDAは空いていましたが、CRS-22の前にクルードラゴン「エンデバー」の打ち上げが控えており、そのままではISS上方のIDAは「エンデバー」が使ってしまうことになります。

そこで、CRS-22の到着前に地球へ帰還する「レジリエンス」をISS上方のIDAにあらかじめ移動しておくことで「エンデバー」のために前方のIDAを空けておき、CRS-22の到着時に上方のIDAが使えるようにする作業が行われたというわけです。

カーゴドラゴンのトランク(被与圧部)の様子。写真はCRS-21でISSに運ばれた米ナノラックス社のエアロックモジュール「ビショップ」

【▲ カーゴドラゴンのトランク(被与圧部)の様子。写真はCRS-21でISSに運ばれた米ナノラックス社のエアロックモジュール「ビショップ」(Credit:NASA)】

なお、有人宇宙船「ソユーズ」や無人貨物船「プログレス」がドッキングするロシア区画では、しばしばドッキング場所の変更が実施されています。クルードラゴンやカーゴドラゴンだけでなくボーイングが開発中の有人宇宙船「スターライナー」もIDAを使用するため、今後は日米欧のモジュールで構成されるアメリカ区画でも同様の作業が行われる機会が増えそうです。

 

Image Credit: NASA TV
Source: NASA / NASASpaceFlight.com
文/松村武宏

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