火星探査機「インサイト」の火星地震計「SEIS」を覆うドーム。2021年3月14日、ドーム沿いに土を流し落とす作業を実施した後に撮影されたもの(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲火星探査機「インサイト」の火星地震計「SEIS」を覆うドーム。2021年3月14日、ドーム沿いに土を流し落とす作業を実施した後に撮影されたもの(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間4月2日、火星のエリシウム平原でミッションを行っている火星探査機「InSight(インサイト)」マグニチュード3クラスの地震を2件検出したことを明らかにしました。

■震源地は地質活動が盛んな可能性があるケルベロス地溝帯

インサイトは火星の内部に関する理解を深めることを目的とした探査機で、火星には2018年11月に到着しました。着陸後にロボットアームを使って地上へ設置された火星地震計「SEIS(Seismic Experiment for Interior Structure)」は、2019年4月に史上初めて火星の地震(火震)を検出することに成功しています。

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NASAによると、インサイトは2021年3月にマグニチュード3.3と3.1の地震を検出。震源地はインサイトの着陸地点から東に約1600km離れたところにあるケルベロス地溝帯とみられています。インサイトは地球の2年前(火星では1年前)にもケルベロス地溝帯が震源とみられるマグニチュード3.6と3.5の地震を検出しました。これまでにSEISが検出した500件を上回る地震のうち、明確に検出されたこれら4件の地震を示す信号は、火星の内部を探る上で特に役立つとされています。

火星には地球のようなプレートテクトニクスは存在しないとされていますが、火山活動に由来する地震が発生する可能性があります。ケルベロス地溝帯では過去1000万年以内に溶岩が流れたと考えられていて、固まった溶岩流の一部には過去200万年以内に起きた地震によって破壊されたことを示す痕跡もみられるといいます。今回インサイトが新たに検出した2件の地震は、ケルベロス地溝帯で活発な地震活動が起きているとする考えを強化するものだと受け止められています。

【▲ケルベロス地溝帯の想像図。欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」の観測データをもとに作成(Credit: ESA/DLR/FU Berlin)】

なお、2019年と2021年にそれぞれ2件ずつ起きたマグニチュード3クラスの地震には、どちらも火星の北半球が夏の時期に検出されたという共通点があります。NASAによると、鋭い感度を有するSEISには風や温度変化から保護するためのドーム(覆い)が被せられているものの、冬の時期に吹く風がもたらす振動の影響により、北半球が冬のあいだは地震を検出できなかったようです。

また、夏の時期は風が穏やかになって地震を検出しやすくなるものの、摂氏0度からマイナス100度の間で変化することもあるというインサイト周辺の昼夜の温度差がSEISとインサイト本体をつなぐケーブルを伸縮させることで、データにノイズが生じることもあるといいます。

そのため、インサイトの運用チームではロボットアームのスコップを使ってケーブルに土を被せることで温度変化を抑制し、データのノイズを減らすことを計画しています。先日はその第一歩として、ドームの地面に接する部分に干渉することなく極力SEISの近くまで土を被せるために、ドームを利用してケーブルの上へ土を流し落とす作業が実施されています。

【▲NASAの火星探査機「インサイト」を描いた想像図。左手前の地面に置かれている装置が火星地震計「SEIS」(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

 

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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