NASA新型ロケット「SLS」エンジン燃焼試験に成功、初飛行に向け一歩前進
2回目の燃焼試験で稼働する4基の「RS-25」エンジン(Credit: NASA)
2回目の燃焼試験で稼働する4基の「RS-25」エンジン(Credit: NASA)

2021年3月18日(現地時間、以下同様)、アメリカ航空宇宙局(NASA)は開発中の新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」を構成するコアステージのエンジン燃焼試験「ホットファイア(hot fire)」をミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターにおいて実施しました。今回、コアステージの4基のエンジンは8分強の連続燃焼に成功。SLSの初打ち上げに向けて大きな前進となりました。

SLSは有人月面探査計画「アルテミス」などで用いるべく開発が進められている大型ロケットで、並行して開発中の新型宇宙船「オリオン」などの打ち上げに使用されます。その中核となるコアステージには2011年に退役したスペースシャトルに搭載されていた「SSME」の改良版である「RS-25」エンジンが4基搭載されています。

NASAがホットファイアと呼ぶエンジン燃焼試験は全部で8段階に及ぶコアステージの地上試験「グリーンラン(Green Run)」の最終段階にあたり、4基のエンジンを実際の飛行時間と同じ8分強、最低でも約4分間に渡り稼働させることで、飛行中のコアステージ全体のパフォーマンスをシミュレートする試験です。

ホットファイアは2021年1月16日に一度実施されましたが、この時はエンジンの噴射方向を変える推力偏向制御システムの測定値が一部制限を超えたため、点火から1分7秒が経った早い段階でエンジンが自動停止しています。NASAでは2月下旬にホットファイアを再度実施する予定で準備を進めていましたが、液体酸素の配管系統を構成するバルブの1つを修理する必要が生じたことから3月にずれ込んでいました。

予定から1か月ほど遅れて実施された今回のホットファイアではエンジンが8分19秒に渡り稼働し、試験は成功裏に終了しています。4基のエンジンは73万3000ガロン(約277万リットル)に達する極低温の推進剤(液体水素と液体酸素)を消費しつつ、推力偏向やスロットルの調整を試しながら最大で4基合計160万ポンド(約7100キロニュートン)の推力を発揮しました。

一連の試験を終えたコアステージは、整備後にフロリダ州のケネディ宇宙センターへと移送されます。移送後は先日組み立てを終えた2基の固体燃料ロケットブースターをはじめとしたSLSを構成する他のハードウェアやオリオン宇宙船の初号機と統合され、SLSおよびオリオンの初飛行となるアルテミス計画最初のミッション「アルテミス1」の実施を待つことになります。

エンジンが点火され燃焼試験が始まったステニス宇宙センターのB-2テストスタンド(Credit: NASA/Robert Markowitz)
エンジンが点火され燃焼試験が始まったステニス宇宙センターのB-2テストスタンド(Credit: NASA/Robert Markowitz)

 

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Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏