メアリー・ウィンストン・ジャクソンの孫であるブライアン・ジャクソン(左)と義理の息子であるレイモンド・ルイス(右)は、2021年2月26日(金)、ワシントンDCのNASA本部で、メアリー・ウィンストン・ジャクソンNASA本部の標識の除幕式を行いました。(Credit: NASA/Joel Kowsky)
メアリー・ウィンストン・ジャクソンの孫であるブライアン・ジャクソン(左)と義理の息子であるレイモンド・ルイス(右)は、2021年2月26日(金)、ワシントンDCのNASA本部で、メアリー・ウィンストン・ジャクソンNASA本部の標識の除幕式を行いました。(Credit: NASA/Joel Kowsky)

NASAは2021年2月26日、NASA初のアフリカ系アメリカ人女性エンジニアであるメアリー・ウィンストン・ジャクソン(Mary Winston Jackson1921-2005)に敬意を表してワシントンにあるNASA本部ビルに彼女の名前を命名する式典を行いました。

「今日、メアリー・ウィンストン・ジャクソンNASA本部の正式な命名により、彼女がもはや隠された人物(a hidden figure)ではないことを保証します」と、NASA長官代行のスティーブ・ユルチク(Steve Jurczyk)氏は述べています。「ジャクソンの生涯は、信じられないほどの決意に満ちた物語です。彼女はNASAのどんな困難にも耐え忍ぶ精神を体現し、インスピレーションを与え、科学と探査を前進させました」

ジャクソンはバージニア州ハンプトンで生まれ育ちました。彼女は1942Hampton Institute(現在のハンプトン大学)で数学と物理科学の学士号を取得し、当初は黒人学校の数学教師や簿記係などの仕事をしていました。

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1951年にNASAの前身であるNACA(アメリカ航空諮問委員会)に就職し、ラングレー研究所(Langley Research Center)で「計算手」(computer)の仕事に就きました。その後、航空機の風洞実験に関わるようになり、さらに大学院レベルの数学と物理学の夜間講座を修了し、1958年にNASAで最初の黒人女性エンジニアになりました。

その後20年間、彼女はエンジニアとして実りあるキャリアを積み、12本ほどの研究論文を単著や共著で執筆しました。しかし、年を重ねるごとに昇進が遅くなり、管理職レベルへ踏み込めないことに苛立ちを覚えるようになりました。

1979年、研究所の女性専門家も例外ではなく「ガラスの天井」がルールであることに気づき、彼女は最終的に劇的なキャリアチェンジを成し遂げました。エンジニアを辞め、ラングレー研究所の連邦女性プログラムマネージャーの空きポジションを埋めるために降格を決意したのです。そこで彼女は、NASA次世代の女性数学者、エンジニア、科学者の採用と昇進に取り組む努力をしました。

彼女は1985年にラングレー研究所を退職し、2005ハンプトンで83年の生涯を閉じました

ラングレー研究所時代のメアリー・ウィンストン・ジャクソン(Credit: NASA)
ラングレー研究所時代のメアリー・ウィンストン・ジャクソン(Credit: NASA)

ラングレー研究所でのジャクソンたち「計算手」の活躍は、2016年のマーゴット・リー・シェタリー(Margot Lee Shetterly)の著書『隠された人物:アメリカンドリームと宇宙開発競争を勝利に導いた黒人女性数学者の知られざる物語』(“Hidden Figures: The American Dream and the Untold Story of the Black Women Mathematicians Who Helped Win the Space Race.”、日本語訳『ドリーム NASAを支えた名もなき計算手たち』山北めぐみ翻訳、ハーパーコリンズ・ ジャパン)で注目を集めました。同年この本は映画化され、ジャネル・モナエ(Janelle Monáe)がジャクソン役を演じ、映画も人気を博しました。

アメリカでは2月を「黒人歴史月間」(Black History Month)に制定しています。2月28日のNASAの発表によると、黒人歴史月間を祝って、ISSに搭乗しているNASAの黒人宇宙飛行士ビクター・グローバー(Victor Glover)はカマラ・ハリス副大統領と電話で会話をしました。会話は有人宇宙飛行の遺産やISSからの地球の眺めをはじめ月や火星へのミッションにまで及びました。

Black History Month(Credit: SETI Institute)

また、SETI協会は「黒人歴史月間」を祝い、同サイトで11名の黒人の天文学者や宇宙飛行士などを顔写真入りで紹介しています。

そこには「黒人歴史月間は、アフリカ系アメリカ人の貢献を認識し祝うための年に一度の機会ですが、その貢献は歴史の中で多くの場合あまりにも認められてきませんでした。私たちは、彼らの物語を取り上げ、彼らの功績から学び、インスピレーションを得るためにお手伝いできることを光栄に思っています」と記されています。

 

Image Credit: NASA/Joel Kowsky、NASASETI Institute
Video Credit: NASA
Source: NASA HQNASANASA ISSSETI Institute
文/吉田哲郎

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