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離陸後上昇するスターシップ「SN10」。スペースXによるライブ配信アーカイブより(Credit: SpaceX)
離陸後上昇するスターシップ「SN10」。スペースXによるライブ配信アーカイブより(Credit: SpaceX)

日本時間2021年3月4日、スペースXは開発中の大型宇宙船「スターシップ(Starship)」の試験機「SN10」(SNはSerial Numberの略)による3回目の高高度無人飛行試験を実施しました。

今回の試験では過去の飛行でも達成されていた目標高度10kmへの上昇と到達、上空から着陸地点への制御された降下に加えて、ついに着陸地点へのソフトランディングも成し遂げられました。ただし、着陸から数分後にSN10は爆発し、今回も最終的に機体は喪失しています。

▲スペースXが公開しているSN10飛行試験の配信アーカイブ(Credit: SpaceX)▲

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スターシップの飛行試験は2019年8月の縮小版試験機「スターホッパー」による高度150mへの低高度飛行試験から始まりました。2020年からは実機サイズの試験機による飛行が始まり、8月の「SN5」と9月の「SN6」は機体やエンジンの一部を省略した状態での低高度飛行試験に成功しています。

2020年12月には降下中に機体の姿勢と誘導を担う4枚のフラップやノーズコーン(機首部分)、それに3基のエンジンを搭載した「SN8」による初の高高度飛行試験が実施されました。SN8は離陸から制御された降下までは成功したものの、燃料タンクの圧力不足により推力が失われたことでハードランディングに至っています。続く「SN9」による高高度飛行試験は2021年2月に実施されましたが、今度は降下中の水平姿勢から着陸時の垂直姿勢へと移る際に推力を失い、着陸地点に激突しました。

着陸地点の直上で垂直姿勢に移行するSN10。スペースXによるライブ配信アーカイブより(Credit: SpaceX)

着陸の成否に注目が集まる中で実施された今回の飛行試験では、再点火された3基のエンジンによる水平姿勢から垂直姿勢への移行に成功。SN10は離陸地点のすぐそばに設置されている着陸地点へと計画通り1基のエンジンを使って降下し、ソフトランディングにも成功しました。数分後に爆発が発生して機体は失われたものの、映像からはその時点まで安定した直立状態を保っている様子が見受けられ、課題だった着陸を含めた飛行そのものにSN10は成功したと言えそうです。

スターシップの建造と試験が行われているテキサス州ボカチカで取材を続けているNASASpaceFlight.comによると、現地ではSN10に続く試験機「SN11」以降の機体や、スターシップの打ち上げに使われるブースター「スーパーヘビー(Super Heavy)」の試験機「BN1」も準備が進められているほかに、スターシップやスーパーヘビーに搭載されるエンジン「ラプター」も次々と搬入されているとのことです。

着陸後のSN10。この数分後に爆発して機体は失われた。スペースXによるライブ配信アーカイブより(Credit: SpaceX)

なお、SN10の飛行試験に先立つ日本時間3月3日、スターシップによる民間人初の月周回宇宙プロジェクト「dearMoon」を2023年に実施する予定の前澤友作氏が、同乗者8名の募集を開始しました。また、スターシップはアメリカ航空宇宙局(NASA)の月面有人探査計画「アルテミス」で用いられる「有人着陸システム(HLS:Human Landing System)」の候補のひとつにも選ばれています。

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スペースXのCEOイーロン・マスク氏はSN10の飛行を受けて「スペースXのチームは素晴らしい仕事をしています。真の成功は、いつの日かスターシップの飛行が当たり前になることです」とツイートしており、dearMoonの月周回飛行や2022年以降が構想されている火星への打ち上げなどに向けて、今後も同社らしいハイペースな開発が続けられていくものと思われます。

 

 

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Image Credit: SpaceX
Source: SpaceX / NASASpaceFlight.com
文/松村武宏

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