ロシアとインドの地球観測衛星がニアミス、数百メートルまで接近
地球低軌道を周回するスペースデブリ(宇宙ゴミ)のイメージ図(Credit: ESA)

ロシアの国営宇宙企業ロスコスモス(Roscosmos)は現地時間11月27日、ロシアとインドで運用中の地球観測衛星が数百メートルまで接近するニアミスが発生したと発表しました。ロスコスモス傘下の中央機械建設研究所(TsNIIMash)によると、ニアミスが発生したのは日本時間2020年11月27日10時49分のこと。接近したのはロシアの「Kanopus-V」とインドの「CARTOSAT 2F」とされており、両衛星は224メートルまで危険なほど接近したと発表されています。

いっぽう、インドのザ・タイムズ・オブ・インディアは現地時間11月28日付で、「衛星は4日間追跡されており、ロシアの衛星との距離も約420メートル離れています。衝突を防ぐための回避マヌーバは150メートルまで接近した場合にのみ行われます」とするインド宇宙機関(ISRO)のシヴァン議長の言葉を伝えています。シヴァン議長は、同じような軌道を周回する人工衛星どうしが接近するのはめずらしいことではないとも付け加えています。

地球低軌道の利用が進むにつれて運用中の人工衛星は増えており、近年ではスペースXの衛星ブロードバンドサービス「スターリンク」のように数千~数万基の衛星で構築される衛星コンステレーションの整備も進められています。欧州宇宙機関(ESA)によると、運用中の衛星はアメリカの宇宙監視ネットワークなどによって状況が把握されていて、地球低軌道にある一般的な衛星については衝突の危険性が毎週何百も報告されているといいます。その後の追跡によって多くのケースでは回避が不要であることが判明するものの、衝突の確率が高いケースでは衝突回避マヌーバ(別の人工衛星やデブリとの衝突を回避するための軌道変更)が準備・実行されることになります。

また、寿命や故障などで運用を終えた衛星や打ち上げに使われたロケットの一部、破損した衛星の破片といったスペースデブリ(宇宙ゴミ)も増加の一途をたどっています。ESAの衛星は2019年の時点で平均して1年間に複数回の衝突回避マヌーバを実施する必要があり、その多くはスペースデブリが原因だといいます。2020年9月には国際宇宙ステーションもデブリ回避マヌーバを実施していますが、NASAのブライデンスタイン長官によると2020年のデブリ回避マヌーバはこれで3回目とされています。

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制御できないスペースデブリとの衝突を防ぐべく、軌道上からデブリを除去したり、不要になった人工衛星を速やかに減速・落下させるための装置の開発などが国内外で進められています。ESAはスイスのスタートアップ企業クリアスペース(ClearSpace)とともに世界初のスペースデブリ除去を2025年に実施する予定で、日本でもスカパーJSATがレーザーアブレーション(レーザー光を当てたごく一部分を加熱・蒸発させる技術)を利用したスペースデブリ除去サービスの2026年開始を目指しています。

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Image Credit: ESA
Source: Roscosmos / TOI / ESA
文/松村武宏