日本時間2020年11月17日13時1分、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の野口聡一宇宙飛行士ら4名を乗せたSpaceXの有人宇宙船「クルー・ドラゴン」運用初号機「Resilience(レジリエンス)」(※)は、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功。野口宇宙飛行士らは2020年10月から滞在している3名と合流し、国際宇宙ステーションの7名体制が始まりました。
クルー・ドラゴン運用初号機による今回のミッションは「クルー1(Crew-1)」と呼ばれており、日本時間2020年11月16日午前9時27分にケネディ宇宙センターから「ファルコン9」ロケットによって打ち上げが行われました。ファルコン9の2段目とクルー・ドラゴンは打ち上げから約12分後に分離されています。
※…困難や苦境から回復する力、立ち直る力といった意味を持つ
有人宇宙船は新時代へ
今回の「クルー・ドラゴン」は、単なる初号機ではなく「運用」と断り書きがついています。フライトナンバーも単なる数字ではなく"Crew"-1となっているのですが、これには理由があります。
有人宇宙船には高い信頼性が求められますので、何度も試験飛行を行います。「クルー・ドラゴン」でいうならば、2015年に緊急脱出用ロケットの試験を行い、ついで2019年3月2日にテスト飛行ミッション「デモ1(Demo-1)」にて無人のクルー・ドラゴンが打ち上げられました。これは打ち上げ後3日目にISSにドッキング、8日目に分離し無事に地球に戻りました。次は有人飛行となるところですが、その前に、ロケット飛行中に問題が起きた場合に安全に脱出できるか確かめる飛行中脱出試験が2020年1月19日に行われました。
こうした試験を経て日本時間2020年5月31日、初の有人飛行ミッションとなる「デモ2(Demo-2)」の打ち上げが行われて見事成功を収めました。ここまで実際に宇宙に行ったフライトは2回、ともに「デモ(Demo)」すなわち試験飛行と位置づけられていました。
無人・有人各1回の試験飛行の成功を経て、今度は本番に臨むことになりました。それが今回打ち上げられた"Crew"-1、日本語で言う「運用」初号機なのです。無事に成功すれば、いよいよ本格運用が始まります。クルー2(Crew-2)にはJAXAの星出彰彦宇宙飛行士の搭乗も予定されています。
カプセルは再使用可能
「クルー・ドラゴン」は、世界の有人宇宙船としては2003年に打ち上げられた中国の「神舟」5号以来17年ぶり、アメリカの宇宙船としては1981年のスペースシャトル初飛行以来40年ぶりの新型宇宙船です。
その特徴は、カプセル型でありながら再使用可能なことでしょう。Crew-1は新品のカプセルですが、次回のCrew-2ではDemo-2で使用したカプセルを再利用する予定となっています。
共に飛ぶ飛行士たち
Crew-1には野口飛行士の他にアメリカ人宇宙飛行士が3名乗り組みました。それぞれの略歴を紹介しておきましょう。
上の写真、左から順番に:
シャノン・ウォーカー宇宙飛行士。所属はNASAで、Crew-1ミッションスペシャリストを務めます。第24次/第25次長期滞在に続き今回が2回目の飛行です。
ビクター・グローバー宇宙飛行士。所属はNASAで、Crew-1パイロットを務めます。米国空軍の戦闘機テストパイロットを経て2013年にNASAの宇宙飛行士に。今回が初宇宙飛行です。
マイケル・ホプキンス宇宙飛行士。所属はNASAで、Crew-1コマンダー(船長)を務めます。第37次/第38次長期滞在に続き今回が2回目の飛行です。
野口聡一宇宙飛行士。所属はJAXAで、Crew-1ミッションスペシャリストを務めます。飛行経験は過去2回、2005年のSTS-114ミッションではスペースシャトル、2009年の第22次/第23次長期滞在ではソユーズ宇宙船に搭乗。今回の中では一番のベテラン飛行士で、3種の宇宙船に乗るのは「ジェミニ」「アポロ」そして「スペースシャトル」に搭乗したジョン・ヤング宇宙飛行士以来2人目となる快挙です。
Image Credit: NASA, JAXA, SpaceX
Source: JAXA / SpaceX / NASA (1) / NASA (2)
文/金木利憲