次世代宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」の複雑な展開手順
折り畳まれた状態のソーラーパネル(中央下)が再装着された「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡(Credit: NASA/Chris Gunn)

NASAを中心に開発が進められている期待の次世代宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」は、2021年10月31日に打ち上げが予定されています。NASAは8月27日、地上試験のため一時的に取り外されていた全長6mのソーラーパネルが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に再び取り付けられたことを明らかにしました。

直径6.5mの大きな主鏡や展開するとテニスコートくらいの広さになるサンシールド(日除け)を備えるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、そのままでは大きすぎて打ち上げに使われる「アリアン5」ロケットに搭載できないため、打ち上げ後に各部分を展開する構造が採用されています。ソーラーパネルも同様で、ロケット上段から分離された直後、バッテリーに蓄えられた数時間分の電力が尽きる前に展開されることになります。

2014年に公開されたこちらの動画では、打ち上げ後のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測を始めるまでの各部の展開や軌道修正といった手順が示されています。今回取り付けられたソーラーパネルの展開は打ち上げから30分ほど(動画の0分29秒~)の時点で予定されていることがわかります。その後は何回かの軌道修正噴射をはさみつつ、おおむねアンテナ、サンシールド、副鏡、主鏡の順に展開されていきます。

なかでも複雑なのは望遠鏡を低温に保つためのサンシールドの展開です。主鏡を挟み込むように畳まれている前後のパレットを展開し、望遠鏡を持ち上げて、フィルムのカバーを外し、左右両側のアームを伸ばして、5枚重ねのフィルムを持ち上げ間隔を広げることで、ようやく展開が完了します。

宇宙で最初に誕生した世代の星(初代星、ファーストスター)や最初の世代の銀河太陽系外惑星の観測などで大きな成果を上げることが期待されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。打ち上げ後の手順をすべて乗り越え、無事に観測が始まることを願うばかりです。

 

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Image Credit: NASA/Chris Gunn
Source: NASA
文/松村武宏