JAXA宇宙科学研究所は6月8日、公募型小型計画の4号機として次期太陽観測衛星「Solar-C (EUVST)」(以下Solar-C)を選定し、ミッション定義審査に向けた概念検討を進めていくと発表しました。選定結果は6月2日の宇宙政策委員会基本政策部会にて報告されています。
■太陽コロナの加熱やフレアの発生メカニズムを解明するべく2020年代半ばの打ち上げを目指す
Solar-Cは2006年に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」の後継機にあたる観測衛星で、紫外線の分光観測により太陽コロナの加熱問題とフレアの発生メカニズムに迫ることを目的としています。搭載される望遠鏡の空間分解能は0.4秒角で、太陽の磁力線や磁場リコネクション領域の構造を詳細に捉えることが可能。また、極端紫外線を通して観測できる温度帯は約1万~約1000万度に渡っており、彩層からコロナ、フレアに至る温度範囲を隙間なく観測できるとされています。観測成果はフレアの予報や他の恒星の研究、プラズマ物理や原子物理のさらなる理解や検証などに役立てられることが期待されています。
現在の太陽活動はおよそ11年で変化する活動周期が移り変わる極小期にあたるとみられていますが、Solar-Cはこれから活発化していく第25太陽活動周期の極大期に合わせて観測を行う計画です。打ち上げは2020年代半ばにイプシロンロケットを使って実施される予定で、運用期間は2年とされています。
なお、公募型小型計画としてはこれまでに小型月着陸実証機「SLIM」、深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」、赤外線位置天文観測衛星「小型JASMINE」が選ばれており、2022~2024年度の打ち上げを目指して計画が進められています。
Image Credit: NAOJ/JAXA (Solar-C WG)
Source: JAXA/ISAS / Solar-Cプロジェクト
文/松村武宏