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人工衛星は天文学だけではなく気象観測やGPSなど私たちの生活にも重要な役割を果たしていますが、打ち上げまでには様々な試験が行われます。そうした試験の中に、人工衛星の電気・電子部品が正しく動作することを確認するものがあります。人工衛星が電波や電気的なノイズを受けても問題ないか、また人工衛星内の複数の装置が互いに影響しないかなどをテストするものです。このような試験では、周囲からの電波・雑音があったり人工衛星自身が出す電波などが壁に反射したりすると解析が難しくなるため、それらを排除できる特殊な環境を用意する必要があります。

上の画像はESA(欧州宇宙機関)のテストセンターであるESTEC(欧州宇宙技術研究センター)が持つテスト環境「マクスウェル・テスト・チャンバー」で、オランダのノールトウェイクにあります。高さは9メートルほどもあり、内側はとげのようなものがびっしりと並んでいるのがわかります。これらは吸収材で、電気的・磁気的な信号や音を反射させないためのものです。一方で外部からの電気的・磁気的な影響を受けないようにできています(このような入れ物・空間を「ファラデー・ケージ」または「ファラデーのかご」と呼び、自動車の中にいると落雷の影響を受けないことと似ています)。このテスト・チャンバーに人工衛星を入れることで、人工衛星から発せられるものは周囲の壁に吸収され、あたかも無限の宇宙空間にいるような状況を作り出しているのです。

ここで行われる各種のテストはコンピューター制御により自動化されており、技術者たちの負担が軽くなるように設計されています。なお、名称の先頭にある「マクスウェル」はイギリスの物理学者「ジェームズ・クラーク・マクスウェル」から付けたものです。マクスウェルは電気・磁気に関する学問(電磁気学)に大きく貢献した人物で、私たちの現代の生活もマクスウェルたち物理学者の研究がなくては成り立っていないでしょう。マクスウェルは19世紀の学者ですが、現代のテスト・チャンバーに名前を付けられることからもその影響の大きさをうかがい知ることができます。

 

Image: ESA/Guus Schoonewille
Source: ESA
文/北越康敬

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