【▲金星探査機「あかつき」によって紫外線で撮影された金星。色は擬似的に着色したもの(Credit: PLANET-C Project Team)】

NASAが推進している探査計画のひとつ「ディスカバリー計画」では、火星の内部構造に迫る火星探査機「インサイト」や、太陽系外惑星の分野で大きな成果をあげた宇宙望遠鏡「ケプラー」など、目標の天体を比較的低コストで探査するさまざまなミッションが実施されてきました。今回、ディスカバリー計画の次期候補として、4つのミッションが新たに選定されたことが発表されました。

■ミッション候補のうち2つは金星がターゲット

【▲「VERITAS」における周回探査機の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

今回選定された4つのうち2つは、いずれも金星での探査を行うミッションです。1つ目の「VERITAS」では、合成開口レーダー(SAR)を搭載した探査機を金星に送り、周回軌道上から地表の高精細な地形図を作成。過去から現在に至るプレート運動の有無や火山活動の状況を調べることで、金星が今も地質学的な活動を行っているのかどうか、どうして現在のような過酷な世界になったのかを解明することを目指します。

2つ目の「DAVINCI+」では、金星の大気中に探査機を降下させることが計画されています。金星の空を覆う分厚い雲を通り抜けた探査機は、地表に比較的近い高度の大気組成を調べるとともに、金星の地表を数十cmの解像度で空中から撮影することを予定しています。

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■残る2つのミッション候補はイオとトリトンの観測を予定

【▲木星探査機「ガリレオ」によって撮影されたイオ(Credit: NASA/JPL/University of Arizona)】

残る2つのミッションのうちひとつは、木星の衛星イオを観測する「Io Volcano Observer(IVO)」です。イオは多数の火山が活動する活発な衛星として知られていて、噴火の様子は地球上の望遠鏡からでも観測されているほどです。IVOは木星の周回軌道に入ったのちにイオの接近観測を合計10回実施し、イオの山々、溶岩湖、噴火の様子などを、高解像度かつ最短1分間隔で撮影することが計画されています。

イオの噴火は木星や他の衛星の重力がもたらす潮汐力によって内部が温められる「潮汐加熱」が熱源になっていると考えられています。IVOの観測によって潮汐加熱への理解が深まれば、氷の地殻の下に水の海が存在するとみられるエウロパやエンケラドゥスなど、潮汐加熱を熱源とする他の天体についても新たな知見が得られると期待されています。

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そして最後のミッション候補は、海王星の衛星トリトンを観測する「TRIDENT」です。海王星最大の衛星であるトリトンは他の衛星に対して逆向きに海王星を周回しており、もともと別の場所で形成された天体が海王星に捕獲されたものと考えられています。

これまでにトリトンの接近観測を行ったのはNASAの「ボイジャー2号」のみですが、観測結果からは表面が非常に若い物質に覆われていることが判明しており、ボイジャーが撮影した画像には炭素質とみられる物質が内部から噴出した痕跡らしき黒っぽい縞模様も写っています。TRIDENTはトリトンを目標に接近観測を行い、現在も内部から物質の噴出が起きているのか、内部に液体の水が存在するのかなどを調べる予定です。

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■最終決定は2021年夏を予定、選ばれるのは最大2つ

【▲ボイジャー2号によって撮影されたトリトン(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

いずれも太陽系の謎の一端を解き明かすことにつながる魅力的なミッションですが、これらはあくまでも「候補」であり、4つすべてが採択されるわけではありません。

たとえば、VERITASとDAVINCI+は2017年にディスカバリー計画のもとで選ばれたミッションの最終候補にまで残っていましたが、当時は落選しており、今回が再挑戦となります。なお、2017年に選ばれたのは、合計6つのトロヤ群小惑星(※)を訪問する「Lucy(ルーシー)」と、原始惑星のコアだったと考えられている金属質の小惑星プシケを探査する「Psyche(サイキ、プシケの英語読み)」の2つのミッションでした。

※…木星と太陽の重力が釣り合うラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にあるL4とL5付近に存在する小惑星の総称。

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今回紹介した4つのミッションのうち、実際に行われるミッションとして選ばれるのは最大でも2つ最終決定は来年2021年の夏が予定されています。

 

Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏

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