宇宙望遠鏡「スピッツァー」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

日本時間2020年1月31日7時30分、NASAの宇宙望遠鏡「スピッツァー」がセーフモードへと切り替えられ、当初の予定を大きく上回る16年以上に及んだ運用に幕が下ろされました。

2003年8月25日に打ち上げられたスピッツァーは、「グレートオブザバトリー計画」のもとで開発された4つの宇宙望遠鏡のひとつです。同計画では宇宙望遠鏡の代名詞となった「ハッブル」宇宙望遠鏡が1990年に、ガンマ線観測衛星「コンプトン」(2000年に運用終了)が1991年に、X線観測衛星「チャンドラ」が1999年に打ち上げられており、赤外線からガンマ線に至るさまざまな波長で天体を観測する大規模な計画として進められました。

赤外線で観測するスピッツァーは地球が発する熱の影響を避けるため、太陽を周回しつつ地球から徐々に離れていく「人工惑星」の軌道に投入されました。この点は、地球を周回する「人工衛星」の軌道に投入されたハッブル、コンプトン、チャンドラとの大きな違いです。

スピッツァーが撮影した「へびつかい座ゼータ星」と、恒星風が星間物質と衝突することで生じるバウショック(赤色)(Credit: NASA/JPL-Caltech)

当初スピッツァーの運用期間は5年程度とされており、打ち上げから6年近くが経った2009年には機体を冷却するための液体ヘリウムが枯渇。これにより3つ搭載されていた観測装置のうち赤外線分光観測用の「IRS(InfraRed Spectrograph)」と遠赤外線観測用の「MIPS(Multiband Imaging Photometer for Spitzer)」が使用不能となりました。

この時点ですでにスピッツァーの観測運用は成功していましたが、観測装置の1つである赤外線アレイカメラ「IRAC(Infrared Array Camera)」だけは液体ヘリウムによる冷却ができなくても一部の波長を観測可能であったことから、IRACを使った延長ミッションがスタートします。

スピッツァーが撮影した「ソンブレロ銀河(M104)」外周の塵のリング(赤色)(Credit: NASA/JPL-Caltech)

通称「ウォーム(温かい)ミッション」と呼ばれるこのミッションは次世代の赤外線宇宙望遠鏡である「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡の打ち上げに合わせて2018年に終了する予定でしたが、ジェイムズ・ウェッブの開発・製造が遅延した結果、2020年1月まで延長されました。

ウォームミッションの期間中も、近年急速に進展している太陽系外惑星の分野をはじめ、スピッツァーは重要な観測に用いられてきました。運用は終了したものの、公開されている観測データを通して、今後も天文学におけるスピッツァーの貢献は続くことになります。

スピッツァーが観測に貢献した、「TRAPPIST-1」(左端)を周回する7つの系外惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/松村武宏

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