「ボイジャー2号」の海王星フライバイ探査からまもなく30周年

2019年は「アポロ11号」による有人月面探査から50周年という記念すべき年ですが、太陽圏を突破した現在も飛行を続ける惑星探査機「ボイジャー2号」が太陽系最遠の惑星である海王星に最接近してから30周年を迎える年でもあります。

NASAのジェット推進研究所(JPL)は8月22日、ボイジャー2号の海王星フライバイ当時の様子などに触れた30周年を記念するプレスリリースを公開しました。

ボイジャー2号が撮影した海王星

■地球の1000分の1しか太陽光が届かない海王星をブレずに撮る

1977年8月に打ち上げられたボイジャー2号は、翌月に打ち上げられつつも先行した姉妹機の「ボイジャー1号」に続き、木星(1979年7月)土星(1981年8月)のフライバイ探査を遂行。1986年1月には人類初にして唯一の天王星フライバイ探査を行いました。海王星に最接近したのはそのさらに3年半ほど後、1989年8月25日のことです。

冒頭の画像は、最接近のおよそ5日前に撮影された海王星の全体像。中央付近に見えている暗い部分は「大暗斑」と呼ばれていて、その後の「ハッブル」宇宙望遠鏡による観測では一旦消滅したことが確認されましたが、最近になって再出現しています。

海王星は太陽に対して地球の30倍も遠い軌道を公転しているため、地球の1000分の1しか太陽光が届きません。暗い被写体を撮影するにはカメラの露光時間を長くしなければなりませんが、ボイジャー2号は時速9万kmという最大速度で飛行していたため、そのまま撮るとブレてしまいます。そのため、海王星の撮影時にはスラスターの噴射を調整してボイジャー自体を回転させることで、高速飛行によるブレを打ち消す方法が採られました。

■窒素も凍る海王星最大にして逆行する衛星トリトン

ボイジャー2号は海王星の衛星も撮影しています。なかでも海王星最大の衛星トリトンは、薄いながらも窒素を主成分とした大気を持っています。しかし、トリトンの表面の温度はおよそ摂氏マイナス235度と低温であるため、その多くは霜となってトリトンの表面を凍りつかせています。

こちらの画像はボイジャー2号が撮影したトリトンの様子。画像の下のほうがトリトンの南極にあたりますが、ここにはメタンの氷でできた極冠が広がっています。極冠の表面に幾つも見える黒っぽい縞模様は、トリトン内部からの噴出物によってもたらされた炭素質の物質とみられています。

ボイジャー2号が撮影した海王星の衛星トリトン

また、トリトンは他の衛星とは逆向きに海王星を周回しています。その理由として、もともとトリトンは海王星から離れた場所で形成されたものの、のちに海王星に捕獲された天体なのではないかと考えられています。

天王星と海王星に接近して観測したのは、フライバイ探査を行ったボイジャー2号が最初にして唯一の探査機です。現在ではハッブルのような宇宙望遠鏡や、地上の望遠鏡による観測しか行われていません。

将来の探査計画として、2034年以降に天王星と海王星へ向けてそれぞれ周回探査機を打ち上げる「ODINUS」が欧州宇宙機関(ESA)において検討されています。次に天王星、そして海王星へ探査機が訪れるのは、いつのことになるのでしょうか。

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech

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文/松村武宏

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