人工知能(AI)が太陽系外惑星の生命の探査や地球に近づく小惑星の検知に役立つかもしれません。NASAは機械学習のようなAI技術を用いて、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、惑星探査衛星「TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)」のような新しい望遠鏡のデータを解析することに期待を寄せています。
天文学や宇宙開発に限らず「ビッグデータ」と呼ばれる大量のデータに対してはAIが活躍できますが、特に系外惑星の研究分野ではまばらでノイズが多いデータが増えてくるためデータの理解が難しくなると言われています。そのためAIのような技術は研究を支援するツールとして役立つ可能性があり、このようなテーマを対象としてNASAはインテルやIBM、グーグルなどと協業し、機械学習を応用する技術を開発しています。毎年夏には、NASAが技術者や研究者とともに取り組む「Frontier Development Lab(FDL)」という8週間のプログラムも実施しています。
2018年、FDLのあるチームは系外惑星の画像を分析し、惑星大気に含まれる分子が放出・吸収する光の波長にもとづいて化学組成を特定するため、「ニューラルネットワーク」を使った技術を開発しました。ニューラルネットワークは脳にあるニューロンと呼ばれる神経細胞が互いにつながって情報伝達する仕組みを模倣した情報処理技術です。この技術を用いて、研究者たちは「WASP-12b」と呼ばれる系外惑星の大気に含まれるさまざまな分子の組成を特定することに成功しました。さらに、十分なデータがない場合でもこのような処理が可能とされています。チームは現在も開発を続けていますが、将来の望遠鏡による観測データを解析し系外惑星の候補を絞り込むことに役立つ可能性があると研究者たちはコメントしています。
2017年に参加したあるチームは小惑星の3次元モデル(サイズ、形、回転率を含む)をわずか4日間で生成することができる機械学習技術を開発しました。こうしたプログラムは、地球に衝突する可能性のある小惑星を検知し衝突を回避するという点で非常に重要です。得られるデータは15秒ごとにおよそ2ギガバイトにも及びますが、人的リソースや時間の制約からすべてのデータを解析することはできません。そこでこうした技術をさらに活用することが必要とされています。
また、研究者たちはAIの技術を将来の宇宙船に組み込むことも考えています。こうすることで宇宙船はさまざまな意思決定をリアルタイムで行うことができ、地球の科学者たちと通信する時間を節約することができるようになります。AIによる処理の結果は人間がチェックする必要があるため、すぐに人間を置き換えるものではありません。しかし私たち自身の脳が処理する時間やエネルギーを大きく節約してくれるのは確かであり、今後の技術開発に引き続き期待したいところです。
Image: NASA
Source: Space.com
文/北越康敬