火星探査車「マーズ2020」の組み立てが進められているJPL・宇宙船組立施設の「ハイ・ベイ1」(2019年11月12日撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech)

生命維持が必要な人間に代わり、宇宙探査では無人の探査機が活躍しています。冷戦期に米ソの間で繰り広げられた宇宙開発競争の頃から数多くの探査機が生み出されてきた組立施設を、NASAのジェット推進研究所(JPL)が紹介しています。

■火星探査車や観測衛星などを組み立てる2つのクリーンルーム

ハイ・ベイ1でテストを受けている双子の火星探査車「スピリット」と「オポチュニティ」(2003年2月10日撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech)

カリフォルニア州パサデナにあるJPLの宇宙船組立施設(Spacecraft Assembly Facility)は1961年に建設されました。ここでは宇宙開発競争時代に月や火星、金星へと向けて打ち上げられた探査機をはじめ、太陽圏を脱出した惑星探査機「ボイジャー1号」「同2号」、木星と土星をそれぞれ初めて周回観測した探査機「ガリレオ」「カッシーニ」、火星の地表を移動する探査車などが組み立てられてきました。

宇宙船組立施設には2つのクリーンルームがあります。そのうちの1つ「ハイ・ベイ1(High Bay 1)」では現在、来年打ち上げ予定の火星探査車「マーズ2020」の組立作業が大詰めを迎えています。ハイ・ベイ1ともう1つの「ハイ・ベイ2(High Bay 2)」は、どちらもクラス10,000(※)の清浄度クラスを持つクリーンルームです。室内の空気は1時間に約70回入れ替えられており、室温も摂氏20度ほどが保たれるように設定されています。

※…直径0.5マイクロメートル(髪の毛の太さの200分の1)の微粒子が1立方メートルあたり1万個未満であることを示す

ハイ・ベイ1で組み立てられる金星探査機「マリナー1号」。この頃はまだクリーンルームが設置されていない(1962年5月2日撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech)

初期の宇宙船組立施設にクリーンルームは設置されておらず、飛行機の格納庫のような場所だったハイ・ベイ1では、技術者が喫煙する様子も見られたようです。ところが、1962年に打ち上げられた月探査機の「レインジャー3号」「同4号」が相次いで失敗したことで、クリーンルームの必要性が認識されるようになりました。

マーズ2020は来年夏の打ち上げに向けて、2020年2月にはフロリダに向けて輸送されます。その後、ハイ・ベイ1ではNASAとインド宇宙研究機関(ISRO)が共同開発する地球観測衛星「NISAR」の組み立てが予定されており、その次には木星の衛星エウロパの接近観測を行う探査機「エウロパ・クリッパー」の組み立てが控えています。

なお、JPLの宇宙船組立施設には見学スペースが設けられていて、毎年3万人の見学者が訪れています。また、JPLの公式YouTubeチャンネルではライブ動画も配信されており、クリーンルーム内の様子を視聴することが可能です。

初めて木星を周回観測した「ガリレオ」も、ハイ・ベイ1で組み立てられた探査機のひとつ(1984年11月1日撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

関連:来年打ち上げ予定の火星探査車「マーズ2020」がテスト走行を実施

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: JPL
文/松村武宏

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