打ち上げ後のトラブルにより国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングを中止したボーイングの新型宇宙船「CST-100 スターライナー」が22日、ニューメキシコ州へと無事帰還を果たしました。
■ミッション経過時間のズレが原因で予定軌道に投入できず
スターライナーのクルーモジュールは12月22日21時58分(日本時間、以下同)、ニューメキシコ州のホワイトサンズミサイル試験場に着陸しました。クルーモジュールは3つのパラシュートでスピードを落としながら降下し、緩衝用のエアバッグを展開しつつ無事に地上へと降り立っています。
2日前の12月20日20時36分にフロリダ州のケープカナベラル空軍基地から「アトラスV」ロケットで打ち上げられた無人のスターライナーは、生命維持装置、通信装置、ナビゲーションシステムなどのテストを実施しつつ、ISSへのドッキングも行う予定でした。しかし、打ち上げからおよそ15分後に切り離されたスターライナーは、当初予定していた軌道に入ることができませんでした。
スターライナーはアトラスVから切り離された時点で遠地点181km、近地点72.8kmの軌道(※)に投入されますが、近地点の高度が低すぎるため、切り離し後にスターライナー自身のエンジンを使って近地点の高度を引き上げる噴射を実施することになっています。
ところが、スターライナーのシステムが把握していたミッション経過時間にズレがあったため、予定外の噴射が始まってしまいました。異常に気付いた地上の管制センターは手動での軌道投入噴射実施を試みたものの、推進剤の消費が予定よりも多く、本来噴射すべきタイミングも過ぎてしまったことから、最終的には48時間でホワイトサンズへと帰還できる軌道に投入することとなったのです。
※…地球を周回する軌道のうち、遠地点は「高度が一番高い部分」、近地点は「高度が一番低い部分」を指す
■軌道上で各種テストを実施、帰還できることを証明
予定の軌道にこそ入れなかったものの、今回の無人テスト飛行によって、スターライナーが地球周回軌道へと到達し、地上に無事着陸できる宇宙船であることが証明されました。NASA、ボーイング、それに打ち上げを担当したユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)も、打ち上げから帰還までのあいだに(ISSへのドッキングをのぞいて)さまざまなテストが完了した点を強調しています。
なお、今回の無人テストを終えて帰還したクルーモジュールは、今後実施されるスターライナーの有人飛行で再利用されます。また、フランスの著名な海洋学者ジャック・クストーの海洋調査船にちなみ、今回帰還したクルーモジュールが「Calypso(カリプソ)」と命名されたことも発表されています。
Image Credit: NASA
Source: NASA / Spaceflight Now
文/松村武宏