昨年2018年12月に小惑星「ベンヌ」へと到着してから1年。NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」によるサンプル採取場所がついに決定しました。
■選ばれたのは北半球の候補地点「ナイチンゲール」
12月13日未明(日本時間)、NASAは今年の8月に絞り込んでいた4つのサンプル採取候補地点のなかから、メインの採取地点として「ナイチンゲール(Nightingale:サヨナキドリ)」を選んだことを発表しました。
ベンヌの北半球にある直径140mほどの比較的新しいクレーター内に設定されたナイチンゲールは、ベンヌの地下深くに長年眠っていた物質を採取できることが期待されています。このクレーターは北半球の緯度が高いところにあるため、赤道付近に比べて温度が上がりにくく、表面の物質が変性しにくいとみられることも好材料となりました。
いっぽう、サンプル採取にあたっての課題も挙げられています。ナイチンゲールが設定されたクレーターのサイズは140mありますが、オシリス・レックスが比較的安全にサンプルを採取できそうなスペースは直径16m程度しかありません。これはミッションで当初想定されていた直径50mというスペースに比べてかなり狭く、精密な誘導が必要とされます。
さらに、クレーターの東端には、建物サイズの大きな岩が存在しています。サンプルを採取したオシリス・レックスが上昇するときにこの岩が障害となる可能性があり、やはり探査機を誘導する上での課題とされています。
■バックアップとして赤道付近の「オスプレイ」も選定
また、バックアップの採取地点として、赤道付近にある「オスプレイ(Osprey:ミサゴ)」も選ばれました。ナイチンゲールからサンプルを採取できなくなった場合、第二の採取地点として、オスプレイからのサンプル採取が試みられることになります。NASAの発表では例として、何らかの理由でオシリス・レックスが降下を中断して上昇する際のスラスター噴射によって、ナイチンゲール周辺の地表がかき乱されてしまう可能性を挙げています。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ2」が挑んだ小惑星「リュウグウ」と同様に、ベンヌの表面も当初の想定より岩が多く、サンプル採取地点の選定には1年近い期間を要することとなりました。NASAでは来年2020年1月から春頃にかけてナイチンゲールとオスプレイをさらに詳しく観測し、8月に予定されているサンプル採取に向けたリハーサルを行うことにしています。
サンプル採取を終えたオシリス・レックスは2021年にベンヌを発ち、採取されたサンプルは2023年9月に地球へと到着する予定です。
Image Credit: NASA/Goddard/University of Arizona
Source: NASA
文/松村武宏