小惑星ベンヌのサンプル採取地点まもなく選定、候補地点の特徴をおさらい
小惑星探査機「オシリス・レックス」の想像図(Credit: University of Arizona/NASA Goddard Space Flight Center)

1年前に小惑星「ベンヌ」へと到着したNASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」。ベンヌの地表が予想以上に荒々しかったことからサンプル採取地点の選定が難航していましたが、ついにその場所が決定する時が近付いてきました。

■4つの候補地からメインとバックアップの採取地点が選ばれる

オシリス・レックスが撮影した小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)

ベンヌの大きさは直径500mほど。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ2」がサンプル採取を実施した小惑星「リュウグウ」(直径およそ900m)より小さいものの、どちらもそろばんの玉のように赤道部分がふくらんだ、よく似た形状をしています。

想定よりも地表の岩が多かったことからサンプル採取地点の選定に時間を要したリュウグウと同様に、ベンヌの地表も岩が多く、当初想定されていた直径50mのスペースを確保できないことが判明します。

その後、採取地点のスペースを直径10~20mまで狭めることで、今年の8月には候補地点を4つに絞り込むことができました。4つの候補地点には、それぞれエジプト原産の鳥の名前が付けられています。

ナイチンゲール(Nightingale:サヨナキドリ)…北半球。暗い物質に覆われている。細かな物質が多く有望な地点だが、緯度が高いために探査機の誘導が課題。東にある建物サイズの岩も障害となる。
キングフィッシャー(Kingfisher:カワセミ)…赤道付近。小さなクレーター内に設定されたが、隣り合うクレーターにも細かな物質あり。含水鉱物(水酸基の形で水を含んだ鉱物)の存在が期待される。
オスプレイ(Osprey:ミサゴ)…赤道付近。炭素に富んだ鉱物が多く、採取できる物質の種類が豊富な可能性があるも、その後の観測で採取するには大きすぎる物質も散在していることが判明。
サンドパイパー(Sandpiper:シギ、イソシギ)…南半球。変成作用を受けていない含水鉱物の存在が期待される。比較的安全に採取できそうな地形だが、岩の間から細かな物質を採取するのが困難な可能性も。

8月に絞り込まれた4つの候補地点を写したもの。左から「ナイチンゲール」「キングフィッシャー」「オスプレイ」「サンドパイパー」(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
各候補地点のベンヌ地表における位置を示した図(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)

まもなく、この4つの候補地点からメインとバックアップのサンプル採取地点が選定されます。選定後は2つの採取地点のさらなる観測とリハーサルが行われ、来年2020年の夏にはオシリス・レックスによるベンヌのサンプル採取を実施。ミッションが順調に進めば、ベンヌが採取したサンプルは2023年9月に地球へと到着する予定です。

 

関連:NASA、小惑星ベンヌからのサンプル採取候補地4つを選定。12月に決定へ

Image Credit: NASA/Goddard/University of Arizona
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/osiris-rex-in-the-midst-of-site-selection
文/松村武宏