NASAの火星探査機「インサイト」の地中センサーがトラブルを乗り越え、地下に向けて前進を再開したとお伝えしたのがちょうど一週間前の先週月曜日。よかったと胸を撫で下ろしたところだったのですが、思いがけぬトラブルに再び見舞われてしまいました。
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■地中からずるずると押し戻されてしまった「モール」
NASAのジェット推進研究所(JPL)が10月28日朝(日本時間)に発表した内容によると、地下5mを目指して掘削を再開することに成功した熱流量計「HP3」(※)のセンサー部分:通称「モール」(the mole、もぐら)が、どういうわけか逆戻りして、火星の地表に半分程度飛び出してしまったようです。
NASAが公開している一連の画像をチェックしてみると、インサイトのミッションが始まってから325ソル目の12時28分38秒撮影の画像からモールが逆向きに動き始め、20分後の12時48分24秒撮影の時点で一旦停止しています(1ソル=火星の1日、時間はいずれもインサイトの現地時間)。
その後、16時7分34秒撮影の画像には再び後退し始めた様子が写っており、約50分後の17時0分49秒撮影の画像でようやく停止したことが確認できました。モールの全長は40cmありますが、その半分ほどということなので、4時間半ほどの間に20cmくらい逆戻りしてしまったことになります。
※…Heat Flow and Physical Properties Packageの略。火星の地中から放出される熱を測定するための観測装置
■穴を満たした土によって徐々に押し戻されてしまった?
インサイトのツイッター公式アカウント(@NASAInSight)によると、モールに内蔵されている掘削用のハンマーが作動した反動でモール自身が跳ね返って一瞬浮き上がり、そのタイミングで穴の底に少しずつ土が溜まっていった結果、ついにモールが穴から押し出されてしまったとみられます。ようやく掘った穴が崩れた土に埋め戻されてしまったというわけです。
インサイトの運用チームはデータの検討を進めており、今後数日の間に対策が立案されるとのことです。
Image: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA 1,2
文/松村武宏