欧州宇宙機関(ESA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)は2月12日、2014年11月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸した探査機「フィラエ」(フィーレイ、ファイリ)について、復旧の見込みがないことを発表した。
フィラエとの通信は昨年7月より途絶えており、運用チームは母機である探査機「ロゼッタ」を経由し信号を送り、またフィラエからの信号を捉えようとするなど、復旧に当たっていた。
しかし、彗星は太陽から離れつつあり、探査機の電力や熱の条件は悪化する一方であることから、運用チームは信号の送信を止め、復旧をほぼ断念すると決定した。
フィラエのプロジェクト・マネージャーを務めるDLRのStephan Ulamec氏は「残念ながら、フィラエとの通信を再開できる可能性はほぼゼロとなりました。もう信号は送信しません」と述べた。
フィラエは2004年3月2日、母機であるロゼッタとともに打ち上げられ、約10年後の2014年8月6日にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した。そしてロゼッタの調査によって着陸地点が選ばれ、11月13日0時33分に、フィラエは彗星表面に向けて投下された。
しかし、機体を彗星表面に固定するために器具がうまく作動せず、2度バウンドした後、起伏の多い岩場と思われる場所に落ち着いた。機体も大きく傾いていたこともあり、太陽光が十分に当たらず、太陽電池による発電が十分にできない状態だった。しかし、あらかじめ充電されていたバッテリーを使って活動を開始し、当初予定していた観測は、ほぼすべて完了することに成功している。そして着陸から約57時間後、バッテリーが切れたフィラエは活動を停止し、休眠状態に入った。
その時点で、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は徐々に太陽に近付く軌道に乗っていたことから、フィラエに当たる太陽光の量が増え、バッテリーが再充電され、再起動する可能性はあると予測されていた。その予測は当たり、2015年6月13日に再起動に成功し、7か月ぶりにその声を地球に届け、7月9日に通信が途絶えるまで、散発的にデータを送り続けていた。
一方のロゼッタは現在まで順調に彗星の観測を続けており、現時点で2016年9月いっぱいまでミッションが続けられることになっている。最終的には高度を下げつつ、より詳細な地表の画像を送り、そして彗星地表に落下し、破壊処分することが計画されている。
なお、ロゼッタ側の通信装置は、今後もいつでもフィラエからの信号を受信できるようにセットしたままの状態にするという。今後、運用終了に向けて高度下げる中でフィラエからの電波が受信できる可能性もないが、Ulamec氏は「もし信号を受信することができたら、それは奇跡的なことでしょう」と語る。
Image Credit: ESA
■Rosetta’s lander faces eternal hibernation / Rosetta / Space Science / Our Activities / ESA
http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Rosetta/Rosetta_s_lander_faces_eternal_hibernation