宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月18日、前日に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の軌道計算を行った結果、当初の計画通りの軌道に投入されていることを確認したと発表した。
「ひとみ」は2月17日17時45分(日本標準時)、H-IIAロケット30号機に搭載され、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは順調に飛行し、離昇から14分15秒後にロケットから分離され、打ち上げは成功した。
その後、計算の結果、「ひとみ」は地表から最も遠い地点(遠地点高度)が576.5km(計画値575.0km)、最も近い地点(近地点高度)が574.4km(計画値574.0km)、赤道面からの傾き(軌道傾斜角)が31度(計画値同じ)、軌道を一周するのにかかる時間(周期)が96.2分(計画値同じ)の軌道に入っていることが確認され、H-IIAロケットがほぼ狙い通りの正確な軌道に「ひとみ」を投入できたことが裏付けられた。
また、衛星の状態は正常であることも確認されている。
「ひとみ」(ASTRO-H)はJAXAを中心に、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)、国内外の大学などが共同で開発した衛星で、X線という人間の目では見えない光で宇宙を見ることを目的としている。たとえば超新星爆発、ブラックホール、活動銀河核、銀河間の高温のプラズマは激しく活動をしており、数百万度から数億度と非常に温度が高くなっている。X線はこうした温度の高い領域から出ており、これらを観測することで多くの謎が解明されることが期待されている。
衛星の全長は14m、打ち上げ時の質量は2.7トンと、JAXAの科学衛星の中で最も大きく、その中には最先端の技術で開発された高性能なX線望遠鏡が搭載されている。また機体が大きくなったことで、従来のJAXAの科学衛星と比べ、冗長系も十分に確保されている。
現在「ひとみ」は、衛星の太陽電池パドルの展開、姿勢制御機能及び衛星を追跡管制する地上系設備の機能の確認など、一連の健全性を確立する「クリティカル運用期間」(クリティカル・フェイズ)に入っている。JAXAによると、2月28日(日)ごろに、クリティカル運用期間の終了について発表する予定だとしている。その後は本格的な観測が始まり、約3年にわたって運用を続けることが目指されている。
Image Credit: 池下章裕/JAXA
■JAXA | X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の軌道計算結果について
http://www.jaxa.jp/press/2016/02/20160218_hitomi_j.html