東北大学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の東端晃主任開発員らは、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟での宇宙実験で「線虫」を育てたところ、筋肉がやせ細ることを遺伝子やタンパク質の解析で発見したと発表した。
研究チームは、ISSでの2度の宇宙実験を通して、宇宙で生育させたモデル生物の一つ、線虫(C. elegans)のからだの変化を分析。そこから
・運動する頻度が極端に低下する
・エネルギーの代謝や個々の細胞のなかの骨組み(細胞骨格)も低下する
・2回の異なる宇宙実験から、再現性の良い結果が得られた
ことを発見したという。
この2つの実験結果により、線虫のような大変小さく軽い生き物でも、重力は個々の細胞ごとに影響を及ぼすと考えられ、生物は微小重力環境に応じた“からだ”に変化することが強く示唆されたと結論付けている。
上記の研究成果は1月22日に、英国の科学誌ネイチャー・パートナー・ジャーナル「npjマイクログラビティ―(npj Microgravity)」で公開された。
現在、この実験成果を受けて3回目となる宇宙実験を実施し、宇宙環境から受けた生理的な影響が後の世代にまで引き続いて影響するのかどうかを把握することを目指すとしている。
Image Credit: JAXA
■JAXA | 体長1mmの小さな生き物線虫の筋肉も宇宙で育てるとやせ細る―微小重力が個々の細胞レベルに及ぼす影響―
http://www.jaxa.jp/press/2016/01/20160122_c_elegans_j.html