米航空宇宙局(NASA)・ジェット推進研究所(JPL)は9月2日、ことし7月に不具合が発生した地球観測衛星「SMAP」のレーダー観測機器について、復旧を断念したと発表した。ただ、もうひとつの主要な観測機器である放射計は正常なことから、衛星の運用は今後も続けるとしている。

この問題はことし7月7日に発生したもので、SMAPに搭載されている観測機器のひとつである合成開口レーダーに何らかの問題が発生し、動かせない状態に陥っていた。

NASA/JPLでは対策チームを編成し、問題解決にあたってきた。これまでに得られた衛星の状態を示す信号(テレメトリー)の分析で、レーダーのパルスの出力を強くするための装置(HPA)の、低電圧電源に問題がある可能性が高いことがわかってた。対策チームは地上にある予備の部品なども使い、調査や試験が繰り返され、そのデータから復旧が試みられたものの、すべて失敗に終わった。

そして、考えられうるすべての手段を使い果たしたことから、復旧を断念することにしたという。

SMAPはNASA/JPLが運用する地球観測衛星で、今年の1月31日に打ち上げられた。地球全体の土壌に含まれる水分と、凍結している箇所の融解具合を見ることを目的としている。得られたデータは、天気予報や気候変動の予測の改善、洪水や干ばつといった災害の予防、農業の生産性の向上といったことに役立てられる。

衛星は直径6mの傘のようなアンテナを持つ、大変ユニークな姿をしている。このアンテナは合成開口レーダーと放射計の、2種類の装置の目と耳として機能する。合成開口レーダーとは、電磁波を地上に向けて照射し、反射して衛星に返ってきた信号を分析することによって観測する装置で、放射計は地表から出る電磁波の放射を計測する装置である。

合成開口レーダーは壊れたものの、ひとつの観測機器である放射計は問題なく動いており、現在もデータを集め続けているという。また9月末には、これまでに集められた土壌の水分データの最初のセットが公開される予定となっている。

「レーダーを失ったことによって、計画されたデータ収集にいくらかの影響はでますが、それでもSMAPは、地球のシステムを理解するための、貴重な科学成果を生み出し続けます」

またNASAでは、将来の他のミッションで同様の問題が起こらないように、今回の問題に対する包括的なレヴューを行うとしている。さらに別の調査チームも編成するとしている。

SMAP(「スマップ」と発音)という名前はSoil Moisture Active Passive(土に含まれる水分を能動的、受動的に観測)の頭文字から取られている。SMAPミッションは、もともとNASAで開発されていたESSPハイドロスという衛星が基になっている。ESSPハイドロスは2005年にNASAの予算削減が原因で中止されたが、その遺産を活用してSMAPが組み立てられた。

打ち上げ時の質量は944kg。高度685km x 685km、軌道傾斜角98.1度の太陽同期軌道で運用され、8日ごとに同じ地点の上空を通過する。設計寿命は3年が予定されている。

 

■News | NASA Soil Moisture Radar Ends Operations, Mission Science Continues
http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=4710