宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年9月16日、8月2日から中断していた、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)に搭載されている温室効果ガス観測センサー(TANSO-FTS)の、熱赤外バンドによる観測を再開したと発表した。これにより、全バンドでの観測に復帰したという。
「いぶき」は今年8月2日の正午(日本時間)ごろ、温室効果ガス観測センサーの熱赤外バンド(バンド4)用検出器を、マイナス200度Cに冷却するための冷凍機が停止したことから、熱赤外バンドによる観測が中断されていた。
JAXAによると、調査の結果、冷凍機の停止は宇宙放射線などによる一時的な誤作動の可能性が高いと判断。9月14日に冷凍機の再立ち上げをおこなったという。その結果、熱赤外バンド用検出器は所定の温度まで冷却されたことから、停止していた熱赤外バンドの観測(全運用モード)を、9月16日の12時(日本時間)から再開したという。
宇宙から赤外線を観測する場合、観測機器そのものの熱から発生する赤外線によって観測に影響が出ないよう、機器自身を冷やさなければならない。そのために使われるのが冷凍機である。「いぶき」に搭載されているものは単段パルス管冷凍機と呼ばれるもので、冷却には液体窒素が使われている。米国のノースロップ・グラマン社が製造し、同型の冷凍機は「ひまわり6号」や、NASAの地球観測衛星「OCO-2」などにも搭載されている。
TANSO-FTSは、短波長赤外域(1.6μmと2.0μm)と、熱赤外域(14.3μm)に存在する二酸化炭素などの温室効果ガスの吸収スペクトルを、フーリエ干渉計と呼ばれる分光器の一種で測定し、そのガス濃度を決定することができる。
なお、熱赤外バンドによる観測が中断していた間も、短波長赤外バンド(バンド1~3)の検出器は正常だったため、二酸化炭素・メタンの観測は継続しておこなわれていた。
「いぶき」は温室効果をもたらすといわれている二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測し、気候変動の予測精度の向上や、環境問題の対応に貢献することを目的としている。2009年1月23日にH-IIAロケット15号機で打ち上げられ、高度約667km、軌道傾斜角約98度の、太陽同期準回帰軌道から観測を続けている。
2014年1月には、当初計画されていた5年間の定常運用期間を完了したが、衛星の状態が良好だったことから、そのまま運用が継続されている。ただ、衛星の設計寿命である5年を超えていることから故障しやすくなっており、2014年5月には2翼ある太陽電池パドルのうち、片側のパドルの回転機構が停止している。
■いぶき(GOSAT)搭載 温室効果ガス観測センサ 熱赤外バンドの観測再開について|最新情報一覧|いぶき(GOSAT)|人工衛星プロジェクト|くらしに役立つ人工衛星を開発する第一宇宙技術部門
http://www.satnavi.jaxa.jp/project/gosat/news/2015/150916.html
Image Credit: JAXA