三菱重工業は8月19日、「こうのとり」5号機を打ち上げたH-IIBロケット5号機の、第2段機体の制御落下を計画通り実施し、成功した。8月24日、sorae.jpの取材に対して同社が明らかにした。
制御落下は、打ち上げ後のロケット機体を安全に処分することを目的として、H-IIBの2号機から行われているもので、今回で4機連続での成功となった。
衛星を打ち上げた後のロケットは、衛星とほぼ同じ軌道に乗ることになるため、長い間留まり続けると、他の衛星に衝突したり、残った推進剤やバッテリーなどが爆発してスペース・デブリ(宇宙ごみ)を発生させてしまう可能性がある。また、人家のある地域の上空で再突入すると、燃え残った破片が地上に落下し、人や建物に被害を与える可能性もある。
そこでJAXAや三菱重工では、「こうのとり」を打ち上げた後のH-IIBの第2段機体を、早い段階で意図的に軌道から離脱させ、大気圏に狙って落とすことで、安全に処理する「制御落下」という取り組みを実施している。
制御落下は、まず「こうのとり」を分離した後のH-IIBの第2段機体の状態を確認し、問題がなければ機体を進行方向の逆向きに回転させる。そして地球を1周し、種子島の地上局から通信ができる範囲に戻ってきた際に、再度機体の状態や、落下の推定点が確認され、ここでも問題がなければ逆噴射が行われる。
そして軌道を外れた第2段機体は、打ち上げから約100分後に、南太平洋の上空で大気圏に再突入する。機体の大部分は燃え尽きるか、あるいは燃え残った破片があっても、安全な海上に落下することになる。
ロケット上段機体の制御落下は、世界的にもまだ実験レヴェルの段階であり、たとえばアリアン5ロケットによる補給機「ATV」や、デルタIVロケットによる軍事衛星「DMSP-17」の打ち上げなど、ほんの一部のミッションで実施されているのみの、先進的な技術である。
H-IIBでの実施に向けては、機体の健全性や軌道の状態を確かめるための軌道離脱可否判断システムや、第2段ロケット・エンジン「LE-5B-2」を小さな推力で動かすための新しい運転方式の適用など、いくつもの技術開発が行われている。
H-IIBの制御落下は、2011年1月22日に打ち上げられた2号機から行われており、すべて狙った海域への制御落下に成功。今回で4機連続の成功となった。
なお、H-IIAとH-IIBの第2段機体はほぼ同じものであるため、H-IIAでも制御落下は行えることになる。H-IIBの場合は特に、「こうのとり」の投入軌道が地球上の大部分の居住地域上空を通過することもあり、率先して実施されている。