宇宙開発専門ニュース・サイト「SpaceNews」は2015年10月9日、ロシアが昨年打ち上げた軍事衛星が、米国の衛星通信会社インテルサット社が運用する通信衛星2機に対して、異常接近したと報じた。英国のBBCなども10月20日までに報じている。
この軍事衛星は2014年9月27日に打ち上げられたもので、「ルーチ」、もしくは「オリーンプ」と呼ばれている。正体は不明で、ロシア連邦政府機関の人工衛星であるということ以外に、公式に明らかにされている情報はなく、軍事衛星と見られている。
ルーチはその後、東経54度の静止軌道に投入されたことが確認されているが、完全な静止軌道ではなく、東に向けて少しずつ動いていたという。さらにその後、軌道変更を複数回実施しており、今年4月ごろには西経18.1度の静止軌道に入った。これは「インテルサット7」と「インテルサット901」のちょうど中間に位置し、両者に最大10kmまで接近することもあったという。また夏には、大西洋上の静止軌道へ移動したことが確認されている。
これは通常では起こりえない異常なことであり、衝突する危険性もあったことから、米政府やインテルサット社は神経を尖らせたという。またSpaceNewsが伝えたところによると、インテルサット社はロシア側にこの件に関する説明を求めたものの、回答はなかったという。
接近した理由については不明なものの、ロシアの宇宙開発に詳しいRussianSpaceWebは、ルーチのこの異常な動きは、ロシア海軍の艦艇の動きとリンクしていると指摘している。
たとえば今年前半にインド洋上空の静止軌道に滞在した際には、眼下では駆逐艦「アドミラル・パンテレーエフ」が活動しており、また大西洋上に移動した際には、眼下でミサイル巡洋艦「モスクワ」が活動していたという。こうした事実から、ルーチはロシア海軍の通信や、艦艇から発射されるミサイルのデータ中継などの役目を担っているのではと推測されている。
■Russian Satellite Maneuvers, Silence Worry Intelsat
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