ロシア連邦宇宙庁は2015年10月9日、ロシアの新宇宙基地「ヴァストーチュヌィ」の中にある組立・試験棟(MIK)に、最初の「ソユーズ2.1a」ロケットが到着したと発表した。
今後ソユーズは、このMIKの中で組み立てと試験が行われ、今年12月ごろに打ち上げられることになっている。しかし、ロシアのメディアのいくつかは、ヴァストーチュヌィ宇宙基地の建設が遅れているため12月には間に合わないのではないかと報じており、実際に12月に打ち上げられるかは不透明となっている。
このソユーズは9月6日、貨物列車に載せられ、製造が行われたRKTsプラグリェース社の工場を出発した。工場はロシアのサマーラにあり、極東のアムール州にあるヴァストーチュヌィ宇宙基地まで、ほぼロシア連邦を東西に横断するように移動し、9月24日に到着したと発表されている。
しかし、9月24日にヴァストーチュヌィ宇宙基地に到着したはずのロケットが、なぜ10月9日になってようやく基地内のMIKに入ることができたのか、この間ロケットがどこで何をしていたのかについて、公式には何も発表されておらず、不明となっている。
一方、ロシアのイズヴェスチヤ紙は9月29日付けで、このときMIKはまだ完成していなかったことからロケットの受け入れができず、ヴァストーチュヌィ宇宙基地に隣接する鉄道駅で保管されていたと報じている。実際、このころにインターネット上に出回った基地内部の写真から、ロケット組立棟や発射台が未完成であることがわかっている。
また同記事の中では、「建設の遅れが原因で、最初の打ち上げは2016年の中ごろまで遅れるかもしれない」という、ロシア連邦宇宙庁の関係者の発言も報じられている。
さらにザ・モスクワ・タイムズは10月2日付けで、「建物の設計ミスにより、ロケットの受け入れや組み立てができない状況にある」とも報じている。
実際にどのようなことが起きているかは、公式には明らかにされていないが、現在予定されている今年12月の打ち上げは難しいとする見方が濃厚となっている。
●ヴァストーチュヌィ宇宙基地
ヴァストーチュヌィ宇宙基地は、ロシア極東のアムール州で建設が進められている新しい宇宙基地で、完成後はカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の能力を引き継ぎ、静止衛星や有人宇宙船の打ち上げ場所として使うことが計画されている。ソユーズ2ロケットとアンガラ・ロケット用の複数の発射台が建設される他、宇宙飛行士の訓練センターや空港、ロケット推進剤の精製プラントなど、多くの機能を持つ施設になるという。
バイコヌール宇宙基地はもともとソヴィエト連邦内にあったが、ソ連崩壊後はカザフスタン共和国のものになり、ロシアはバイコヌール宇宙基地を引き続き利用するため、カザフスタンに対して年間100億円以上もの賃料を払い続けている。
ヴァストーチュヌィ宇宙基地が完成すれば、カザフスタンに依存することなくロケットの打ち上げが可能となる。ただ、バイコヌール宇宙基地からの完全な撤退がいつになるかはまだ不明だ。
また、ヴァストーチュヌィ宇宙基地の建設をめぐっては、以前から遅れが続いており、今年の春ごろには、建設会社による資金の横領や、作業員への賃金の未払いと、それに伴うストライキが起きているなど、さまざまな問題が発生していることが報じられている。
ヴァストーチュヌィ宇宙基地からの打ち上げは、今回輸送されたソユーズが第1号機となる。なお、ソユーズ2.1aそのものは、これまでバイコヌール宇宙基地やプレセーツク宇宙基地、また南米仏領ギアナのギアナ宇宙センターから、20機以上が打ち上げられている。
Image Credit: Roskosmos
Source: ROSCOSMOS