去る10月8日(土)、石川県金沢市にある金沢市文化ホールを会場に『金沢市宇宙産業シンポジウム』が開催されました。新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響により延期されていたこのイベントは、1年越しの開催となります。

シンポジウムでは、まず基調講演として東京大学大学院工学研究科の中須賀真一教授が「宇宙開発と未来」、宇宙航空研究開発機構(JAXA)人事部長の岩本裕之氏が「宇宙産業と人材育成」が実施され、続いて地元金沢を拠点に活動を続けている日本宇宙少年団(YAC)金沢支部の団員の子どもたちによる活動報告が行われました。

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その後のセクションでは、中須賀教授の司会の下「これからの宇宙産業の広がり」と題し、JAXA 岩本氏、SPACE FOODSPHERE理事の菊地優太氏、Space BD株式会社代表取締役の永崎将利氏、金沢市教育長の野口弘氏の5名によるパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションの途中には、金沢青年会議所の有志らによる発表も行われ、今後金沢を拠点とした宇宙ビジネスコンソーシアムを立ち上げる構想が披露されています。

【▲パネルディスカッション「これからの宇宙産業の広がり」の様子(Credit: 豊原行宏)】

また、会場ロビーでは金沢大学、金沢工業大学、金沢美術工芸大学の地元3大学をはじめ、東京に本社がある宇宙ベンチャー企業各社、宇宙ビジネスに取り組む地元企業各社によるブースや、金沢宇宙塾など地元青少年達の日々の宇宙関連の取り組みを紹介するポスターや作品の展示会も同時に開催されていました。

【▲会場ロビーの展示会の様子(Credit: 豊原行宏)】

来場者の一人、石川県内で事業を営む男性(30歳代)は「金沢でこのような宇宙産業をテーマとしたシンポジウムが開催された事は、大変に意義深い事だと思います。今回のイベントがきっかけとなり、今後地元でも宇宙ビジネスの動きが活発化して行けばよいなと思います。一度限りのイベントに終わることなく、このような機会が今後も継続的に行われるようになってくれれば嬉しく思います。」と話していました。

また、今回のシンポジウムに東京から参加した出展企業の1つ、Space BD株式会社の佐藤正崇氏は「金沢市を中心として、さらに宇宙教育や宇宙産業の輪が広がっていくことを期待すると共に、当社もぜひさまざまな取り組みを金沢の地で展開していきたいと考えています。」と述べています。

■金沢市の宇宙関連の取り組み

金沢における宇宙関連の取り組みは、これまでは主に教育や学術研究の分野が中心でした。

1995年7月に日本宇宙少年団金沢支部(3分団)が発足したのを皮切りに、1998年10月には郊外のキゴ山に天体観測ドームとプラネタリウムを併設した青少年のための宿泊型研修施設「銀河の里キゴ山(キゴ山ふれあい研修センター)」が整備され、2006年6月には「第25回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)」の開催地となるなどしてきました。

2013年7月には金沢市はJAXAと「宇宙教育および普及啓発活動に関する協定」を締結し、2021年度には全国の自治体でも珍しい「金沢市宇宙教育推進計画2021」が策定されています。この間、金沢大学には人工衛星の研究開発を行う「先端宇宙理工学研究センター」が開設されています。

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今回、教育の枠から一歩踏み出して宇宙産業にフォーカスを当てたシンポジウムを企画した理由について、登壇者の一人でもある金沢市の野口教育長は、「金沢に宇宙産業を根付かせる事により、これまで首都圏など他の地域に流出してしまっていた若い有為な人材が地元に留まってもらうインセンティブになればよい」との想いを語っていました。

これまで宇宙教育を中心に発展を続けてきた北陸・金沢の地における宇宙への取り組みが、これから産業・ビジネスの領域においてどのようなプレゼンスを示すのか今後の展開が注目されます。

 

文/豊原行宏

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