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今回から、宇宙ビジネスコンサルタントとして世界各国を飛び回る筆者が、商業宇宙開発を紹介する新連載「大貫美鈴の現地レポート」をスタートします。


 

たぶん宇宙関係のシンポジウムで一番規模の大きいのが「スペースシンポジウム」。2014年にナショナル・スペース・シンポジウムから国際化に対応して?改名、今年で32回目の開催となる。毎年4月に米コロラドスプリングスで開催、今年は11日~14日に40か国以上、1200組織、200出展、12000人が参加した。コロラドスプリングスは空軍の重要拠点の1つ、講演にも展示にもミリタリー色が強く、参加者には米国内外の制服組も少なくない。開催されるブロードモアはゴルフなどスポーツでも有名なホテル、ロッキー山脈をバックに至福の時間が流れる場所である。

ジェフ・ベゾス、再利用ロケット開発で“ゴールデンエイジ”

スペースシンポジウムでは長年宇宙を独占してきたミリタリーや政府が主役であった。もちろん現在もかなりの割合を占めるが、昨今の宇宙商業化の流れを受けて商業宇宙プロジェクトや宇宙ベンチャーが台頭、スペースシンポジウムのランドスケープも変わりつつある。そんな中、今年、最も注目を集め、巨大な会場を埋めたのはジェフ・ベゾスの登壇であったように思う。

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アマゾンドットコムの創業者ジェフ・ベゾスの宇宙会社であるブルー・オリジンはスペースXより2年早い2000年に設立。2006年、2007年にはサブオービタル試験機ゴダードでホバリングの飛行試験を実施している。2010年には商業有人輸送機開発のCCDevに選定され、以降、オービタル機も開発しているが、2014年まで取り組みをアピールすることはなかった。2014年9月にULAとBE-4エンジンの共同開発で提携以降、それまでベールに包まれていた開発状況が発表されるようになった。2015年4月にULAの次期ロケットバルカンの第一段エンジンとしてBE-4の提供を発表、2019年に初号機を打ち上げる。BE-4エンジンを搭載する独自ロケットも開発、2020年の打ち上げを目指している。

サブオービタル機ニューシェパードの開発では2015年11月のテスト飛行で100km超え、同じ機体を使って今年1月と3月に100km超えの飛行を達成し、回収に成功している。ニューシェパードは液体酸素・メタンの推力11万ポンドのBE-3エンジンを搭載した6人乗りのカプセル型で、大きな窓が特徴となっている。ロケットはBE-3の再着火で垂直に陸着回収、カプセルはパラシュートで回収される。有人宇宙飛行の商業運行は2018年に開始予定となっている。今年3月には初めてテキサス州の工場を公開した。

ジェフ・ベゾスは国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙旅行、200Mドルで誘われた月の初周回飛行、400Mドルの月の商業飛行を断ったというエピソードを明かした。低コストで安全に頻繁な宇宙輸送を実現して宇宙の可能性を拓き、ゆくゆくは何百万人もが宇宙で生活し、働くことで宇宙経済を拡大したいという壮大なビジョンのために、自分のロケット開発に注力する。地球を救うために宇宙探査や利用は必要だと考えている。

ジェフベゾス
ジェフ・べソスとサイエンスライターのアラン・ボイル ©Space Foundation

 

ビゲロウ・エアロスペース、“宇宙でタイムシェア”

プレス発表のトップは、ビゲロウ・エアロスペースのロバート・ビゲロウ社長、ULAのトニー・ブレノ社長が揃って行った両社のパートナーシップ締結の発表であった。

ビゲロウはULAとの提携で、2019年または2020年に、フルサイズモジュールとなるBA330を打ち上げて商業運用する。ISSに接続する可能性もあると言う。ビゲロウとULAは初の商業輸送と商業拠点の契約、NewSpaceとOldSpaceのマリアージュにも見えた。宇宙でタイムシェアが実現する日もそう遠くなさそう。

ビゲロウは今年4月8日にスペースXのドラゴン貨物便(CRS-8)でインフレータブルの拡張モジュールBEAMを打ち上げ、10日にISSに到着、16日にISSに接続して、ISSに接続した初の民間モジュールとなった。5月末にフルサイズに展開して、放射線、宇宙デブリ、温度差など過酷な宇宙環境でインフレータブルの性能を試す2年間の実験を行う。

商業宇宙ステーション
ビゲロウの商業宇宙ステーション ©Bigelow Aerospace

 

軌道サービスでアンカーカスタマー獲得

軌道上衛星サービスは今、最もホットな商業プロジェクトの1つであると思う。寿命が尽きた静止軌道衛星を延命、軌道での修理や軌道離脱などを行う。

スペースシンポジウムで、オービタルATKは、静止軌道衛星延命サービスの最初の顧客契約をインテルサットと締結したと発表した。寿命が尽きた衛星に同社のGEOStarバスをベースとしたミッション延命機(MEV)がランデブ・ドッキング、5年間の延命を行う。MEVは15年の寿命であり最大衛星3基の延命が可能、2018年に初号機MEV-1を打ち上げ、2019年から商業運用を開始する予定となっている。このプロジェクト、もともとATKとUS Spaceが設立したVivisatで行われていたが資金調達に行き詰まり、オービタルATKが引き継いだ。

オービタルATKの発表の前週には、ルクセンブルクの衛星オペレータ世界大手SESが軌道上衛星サービスで、MDAとオービタルATKと交渉していることを明らかにした。MDAの軌道燃料補給機は補給後にすぐに移動して他の衛星の補給サービスを行い、オービタルATKはドッキングしたまま5年間補給し続けるそれぞれのアーキテクチャである。SESは現在、52基の通信衛星を運用、年間少なくとも3基の延命需要があるとしている。

今年3月には米国防高等研究計画局(DARPA)がGEOロボット衛星サービスプログラムRSGS(Robotic Servicing of Geosynchronous Satellites )を発表、5年以内の軌道デモを目指した開発を官民連携で進める。

ミッション延命機
GEO衛星のミッション延命機(左側の宇宙機) ©Orbital ATK

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